福岡県議会では23日、県に、市町村へ東日本大震災の被災地のがれきを受け入れるよう要請することを求める決議案が可決される。この動きに対し、反対の声をあげる県民は少なくはなく、すでに県庁や県議会議員に対し抗議も起きている。賛成と反対の間で深まる一方の溝、それぞれの理由を追った。
「高く積もったがれきの山、あれを早く片付けなければ被災地の復興はありえない」と、被災地を視察した福岡県議はいう。また、福岡県が受け入れを検討しているのは焼却処理する可燃物のがれきであることが伝わっていないと同県議は指摘。「がれき=放射性物質」という認識から反対の声があがっているのは、マスコミががれきの受け入れに関して「YesかNoか」と単純化して報じていることが原因という。
がれきは、焼却、粉砕など中間処理、埋め立てという処理の仕方から大きく3つに分別される。さらに、福岡県が受け入れるのは宮城県・岩手県のがれき。原発事故が発生した福島県のものは除かれることが前提となっている。「岩手県に至っては、神奈川県よりも福島第一原発から離れているのに、そんなに敏感になることはないのでは?」という反対側への疑問もあった。
一方、反対側はまず、国の検査やその基準をうのみにする県の姿勢に対して、危機感を抱いている。また、がれきの処理が利権となり、基準が歪められていくことを不安視する声もある。過去、公害を度々経験してきた我が国民は、国のやることを完全に信じ切ってはいけないと学んできた。間違いは起こるものとして備えることを否定してはいけない。現に「想定外」に対する備えがなかったことが、人災とも言える甚大被害を招いた原因とされている。
双方の不安や不満を解消するためには、誤解を生じさせないための丁寧な説明が必要なのだが、いまだ現場レベルではその認識が欠けているようだ。受け入れ反対の立場から福岡県庁に抗議に行った女性は「まず、自分は無関係と言い張る職員の姿勢にがく然。また、渡された文書からその人が担当者だったことがわかり、強い不信感を抱いた」という。
がれき受け入れの決議を受け、26日に市町村を対象に開かれる環境省職員による説明会は一般非公開。このことも「アリバイづくり」ではないかとの憶測を生んでいる。さらに、1年後の3.11を期に全国各地で始まったがれき受け入れの動きに対し「原発再稼動への布石ではないか」との見方もある。放射性物質が含まれないがれきを全国各地で焼却処理し、その灰が安全であると実証することで、高まった国民の原発アレルギーを緩和するのがねらい、という。
賛成と反対の双方が、説明不足や誤った報道から不信感を抱き、互いに理解が得られないという混乱に発展している。今、必要なのは、情報の共有化とそれに基づく認識によって議論が正しくなされることだ。
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