福岡県議会は3月23日、県に、市町村への東日本大震災の被災地のがれきを受け入れるように要請することを求める決議案を、賛成多数で可決した。県は、焼却施設を持っていないため、がれきの受け入れに際し、その焼却を市町村に要請する必要がある。この日、がれきの受け入れを反対する市民約20名が傍聴に訪れた。また、議会が開かれる前には、きょう(26日)、県が市町村向けに開く説明会の中止や傍聴などを求める申し入れを、複数の市民団体などが行なった。
がれき処理に関しては、被災地の復旧復興のために協力を促す政府側と、受け入れに反対する地元との対立が全国的にみられる。その主な原因は、国が新たに定めた焼却灰の埋め立て基準「1キログラムあたり8,000ベクレル」が国際基準を大幅に超えていることにある。3.11以前は、IAEA(国際原子力機関)の国際基準に基づき、1キログラムあたり100ベクレルを超える場合は、低レベル放射性廃棄物処分場に封じ込めてきた。福島原発の事故以降、80倍に跳ね上がった基準値が本当に安全と言えるのかが、大きな焦点になっている。
議会に先立って、小川洋福岡県知事宛てに、3月26日に開催される「震災がれきの受け入れ検討を求める市町村説明会」の中止と、強行開催する場合に傍聴や会議資料・議事録の公開など、同説明会の公開を求める申し入れが行なわれた。「フクオカ住民投票の会」代表の宇田純子氏は、この申し入れに加えて、がれき受け入れ問題に関して、パブリックコメントの募集をするように県側に要求したが、担当した県環境部廃棄物対策課山本規史指導係長は「要求があったことは上司に伝えるが、応える準備はない」と取り合わなかった。
「フクオカ住民投票の会」事務局の脇義重さんは、議会後、記者団の取材に応じ「九州は比較的、放射能汚染の影響が少なく、被災者の受け皿になるなどの役割を果たしている。しかし、がれきの受け入れで放射能汚染が広がれば、避難者を受け入れる場さえなくなってしまう」とコメント。また、「放射性物質は、発生したエリアで閉じ込めるのが原則。よって、放射性物質を帯びたがれきの広域処理は、この原則に違反している」と指摘した。
今回の県議会による決議案の可決や、きょう開かれる「説明会」によって、県はがれきの受け入れに向け、着々と駒を進めているように見える。政府は「がれきの受け入れが、復興支援に繋がる」と国民に呼びかけているが、受け入れの是非が復興を支える意思の有無に直結するという"踏み絵"のような構図に対し、多くの疑問の声があがっている。当然のことながら、がれきの受け入れ以外に復興を支える方法は数多くある。また、被災地からも、がれきの広域処理を求める声が、必ずしも多いというわけではないようだ。
※記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら