国土交通省というのは、幅が広い官庁で、国土政策の企画・立案などのほか、都市・道路・鉄道・港湾などの建設・維持管理といったハード面、測量、観光政策、気象業務、防災対策から、我が国の領海の治安維持など社会資本整備の中核を担っている。
同省の所管業務のなかには、交通政策も含まれているが、国交省が所管する鉄道事業における女性専用車両について賛否の議論が起こっている。
女性専用車両というのは、鉄道など公共交通機関で原則として女性だけが利用できるようになっている車両である。国土交通省は「鉄道事業者において、輸送サービスの一環として導入された女性等に配慮した鉄道車両」と定義している。
大手民鉄で最初に導入したのは京王電鉄で、2001年3月に本格導入している。その後、国土交通省の「女性専用車両 路線拡大モデル調査」に協力する形で、02年10月より、京阪電気鉄道と阪急電鉄がそれぞれ試験導入。翌03年には近鉄や西鉄といった関西以西の大手民鉄でも女性専用車両を順次導入し、05年5月には、京王以外の関東の大手民鉄でも導入されている。
国交省は、03年3月に「女性専用車両 路線拡大モデル調査報告書」を公表し、「本報告書が今後の女性専用車両の普及拡大の一助となり、ひいては女性の社会進出につなげることができれば幸いである」と積極的な推進を求めている。
そもそも女性専用車両が導入された契機は、痴漢行為などで女性が被害を受けることへの対策として出されてきたものだ。ひところ、問題視された埼京線での痴漢事案の多発など心無い一部の男性が行なったことが導入のきっかけになっている。
痴漢対策が必要というのはわかる。だが、一律に男性が特定の車両に乗車を拒否されるのは、本当に妥当なのだろうかという疑問も挙がっている。
11年10月31日号のプレジデントでジャーナリストの村上敬氏が「女性専用車両 男が乗っても法的にはOK」という記事でも指摘しているが、じつは国土交通省は、女性専用車両に男性が乗車してはならないと定めているわけではない。
しかも、女性専用車両は、鉄道事業者が輸送サービスの一環として実施しているもので、法的な強制力はなく、任意だという。一部の男性の不法行為によって、男性の権利が制限されることはないということだ。
ところが現実には、女性専用車両に男性が乗車することには、周囲の女性から冷たい視線が投げかけられ、ときには「ここは女性専用だから降りろ」と迫られることがある。
石原慎太郎東京都知事は、2月の定例会見で、女性専用車両についての質問に対し「女性は弱者ではない」としたうえで「1回乗ってみます。満員の時に、女性の車両に」と述べている。
憲法14条でも「法の下の平等」がうたわれており、性差別は禁じられているが、"女性専用"を謳う車両は、果たして性差別には該当しないのだろうか。
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・石原知事会見内容
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