<観光振興で成功したシンガポール>
シンガポールのカジノの歴史は新しい。カジノ解禁が検討に入ったのは1985年。何度か反対があったものの、2005年、観光競争が激化したのをきっかけに統合リゾート開発の一環として解禁に踏み切り、10年に2つのカジノをオープンさせた。
21世紀の新生シンガポールを象徴する建物になりつつあるマリーナ・ベイ・サンズ(ラスベガス・サンズが運営)。観光振興のために開発されたセントーサ島にあるリゾート・ワールド・セントーサ・カジノは、ユニバーサルスタジオ・シンガポールに隣接している。こちらは、マレーシアの高原リゾート、ゲンティンハイランドなどで成功しているゲンティン社が運営している。
カジノの導入後、外国人観光客が増加。観光産業は、GDPの約6%を占めるまでになっている。シンガポール経済にとって、もはやなくてはならない存在に浮上した。
国土は、マカオよりも広いが、32のカジノがあるマカオに対し、シンガポールは、2つ。カジノ入場が無料の外国人に対して、地元のシンガポール人は入場料を払わなければならないなどのルールがあり、主に外貨を獲得するためのレジャー施設となっている。
<日本はシンガポール式を目指す>
宿泊施設、レストラン、ショッピングモールなどからなる複合施設のなかにカジノがあり、そのなかで、国際会議や展示会で集まった客がブラックジャック、バカラなどのゲームを楽しむ。
宿泊施設やレジャー施設に隣接して設置されたカジノ。国際会議、展示会などの開催、外国人観光客の誘致などを含めて、日本が目指すべき方向は、シンガポールのカジノだ。
日本は、カジノでの観光振興政策に関して言えば、決定、実行の迅速だったシンガポールに追い付かれ、追い抜かれ、すでに大きく水を開けられている。国際カジノ研究所の木曽崇所長は「検討しはじめたのは日本が早かったのに、日本は、動きが遅いんです。その理由は、ねじれ国会などによって、政局が安定していないこともあります。カジノ法案だけでなく、さまざまなところで通してほしいとの要望が多い法案が通っていないのが現状です」と、政治の混乱に苦言を呈する。
合法化がなった後も、地域選定、運営企業決定の手続きがあり、カジノ施設の建設などを含めると、実際の開業までにはまだ時間がかかる。スムーズに行って開業まではあと7年程度かかると見られている。それを思うと、シンガポールには、だいぶ先を越された。
先手を打っていれば、日本でも、マリーナ・ベイ・サンズのような集客力のある複合的な施設がすでに機能しているかもしれない。取れたはずの機会を逸したと言えなくもない。日本の課題は、国内外にアピールできる、吸引力のある複合施設を作れるかどうか。シンガポールに勝つためには、差別化を図るため、日本のよさ、魅力をふんだんに付与しなければならないだろう。シンガポールと違って、国土の広い日本。どこに作るのか?それも勝敗を決するポイントになるだろう。
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