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官房機密費が大新聞記者の"お小遣い"に!~『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』(上杉隆著)PHP新書
書評・レビュー
2012年4月20日 13:40

 我々は、3.11以降、"新聞・テレビは国民に対して平気で「ウソ」をつく"ということを何となく感じてきた。それが本当かどうか、先ずはこの本を読んで、判断して欲しい。

 著者の上杉隆氏は、元ニューヨーク・タイムズ東京支局の取材記者である。1999年に、日本の「記者クラブ」に象徴される新聞・テレビの在り方を批判、自らオープンな記者会見の場を提供することを目的とした「自由報道協会」を設立、代表になった。
さらに、2011年12月31日付で、「ジャーナリスト」の無期限休業宣言をしている。日本のジャーナリストが、国民に対して平気で「ウソ」をつき、原発報道においては、悪事に加担したことが明白になったからだ。

 日本の新聞・テレビ報道の実態が、確かなデータをもとに、赤裸々に描かれている。
 かなり"危ない"内容も含んでいる。上杉氏は、本のなかで、「内容が国家の中枢を揺るがす問題であるだけに、自分の身に何らかのことが起きた場合、仮に事件・事故に巻き込まれるようなことがあった時には、その死因・逮捕案件に関わらず、40万枚のメモが世の中に出るようになっている」と語っている。こわい話だ。

 欧米のメディアと日本の新聞・テレビの権力に対する姿勢、覚悟の違いも描かれている。例えば、ヴェトナム戦争当時、キッシンジャー国務長官から機密情報を得た、「ワシントン・ポスト」編集主幹ベンジャミン・ブラッドリーの話が面白い。ブラッドリーは機密情報を得たが、名前を出すことは禁じられたのだ。彼はどのような行動に出たか。
 約束通り、文中ではキッシンジャーの名前は一切出さずに、「政府高官」とし、「政府高官」とキャプションをつけたキッシンジャーの顔写真を掲載した。

 一方、原発報道の時、国民には「半径20km圏外の地域は安全」と報道しながら、日本の新聞・テレビの記者はどのような行動をしたか。内規ということで、時事通信は60km、朝日新聞と民放は50km、NHKは40km以内には近づいていない。一番、「卑怯」なのは、自分の家族だけは、いち早く関西に避難させていたことだ。

 東電が新聞・テレビの経済部記者を接待づけにしていることは、よく知られている話だ。驚いたのは、その記者たちが、政府に情報を売り、小遣い稼ぎをしていることだ。そして、政府が彼らに支払う財源は官房機密費、つまり国民の税金である。とりあえずは、怒りを通り越して、笑うしかない。

【三好 老師】
 

<プロフィール>
三好 老師 (みよしろうし)
 ジャーナリスト、コラムニスト。専門は、社会人教育、学校教育問題。日中文化にも造詣が深く、在日中国人のキャリア事情に精通。日中の新聞、雑誌に執筆、講演、座談会などマルチに活動中。



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