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電力買取価格1kwh42円を維持~太陽光普及に配慮し高水準(後)
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2012年4月27日 07:00

taiyoukou_2.jpg さて、すばらしい投資先ではあるが、いいことばかりではない。落とし穴ではないが問題点もある。大きな問題は回収スパンが長いことだ。20年以上の耐用年数をいっぱいに使って初めて事業の成否が決定するのが大規模ソーラー発電だ。したがって、途中で「何か」あった場合のリスクがある。その「何か」は、主に2つ挙げられよう。1つ目は台風、竜巻、震災、火災、雹(ひょう)、落石などによるパネルの損傷などの物理的なリスクである。20年、もしくはそれ以上という期間のうちに、何らかのトラブルが発生しないということは言いきれるものではない。それによって致命的なダメージを被ってしまっては投下資産の回収はままならなくなってしまうだろう。

 もう1つのリスクは電力買い取り価格の下落である。今回、予定されている42円という価格は「太陽光発電の普及」も考えて事業者に有利な設定となっている。ということは、太陽光が普及しきったならば引き下げもあり得る。その幅が、たとえば1kwhあたり30円になってしまったら、おそらく発電事業者の多くは途方に暮れてしまうことになるだろう。

 買い取り価格下落は万一の話ではない。その原因は買い取り制度自体にあると指摘しておく。電力の買い取り価格こそ政府が決定するが、お金を払うのは電力会社。そして、電力会社は私企業である。利益を計上してナンボの仕事だ。買い取り価格とは一般企業でいう仕入れにあたる。仕入れが高ければ商品の販売価格は上がって当たり前だ。

 九州電力が平成22年度(2010)に販売した電力量は874億kwh。一方、生産原価は1兆3,766億円(発電に直接かかわらない間接業務の人件費や、その他の活動も含む。それゆえ、実際発電にかかるコストはまだ安い)。電力量を原価で割ると自社で生産した電力1kwhは、なんと15.7円になるのである。いかに42円が高額かわかる。

 この差額分が太陽光サーチャージとして一般ユーザーの電気代に跳ね返ってくる。全量買い取りゆえに太陽光が普及すればするほど、電気代が高くなってしまう。いずれユーザーは高い電気代に不満を訴えるようになり、節電が進むことになるだろう。すると必要とされる電力量は低下する。すると電力会社の自社設備による発電量を抑えるようになり、太陽光の比率がさらに上がる。すると...という電気代インフレサイクルができあがってしまうのである。これこそが電力全量買い取りの本質なのではなかろうか。

 では、どうすればいいか。事業者ならばリスクを考えて太陽光に進出、自家発電を強化の2つに一つ、もしくは両方採用するか否かの選択に迫られることになるだろう。一方、一般家庭などは、太陽光パネル導入に踏み切らねば不満ばかりが募る状況に追い込まれよう。太陽光パネルの価格の動きに注意を払い、安値を見極めて導入を考えた方が賢明だと思われるのである。

 すべての建物の屋根が太陽光パネルで埋めつくされ、自家発電で産業が動いていく世のなかになったら...はたして電力会社は何をする企業になるのだろうか。

(了)
【柳 茂嘉】

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