<PGMを買収した平和>
PGM社長の神田有宏氏(48)はゴールドマン・サックス出身で、2002年アコーディア取締役に就任。昨年5月、ゴールドマンとの提携解消で、アコーディアの取締役を退任。今年1月25日、ライバル会社のPGMの社長に就いた。
PGMは、ゴールドマンと競ってゴルフ場を買収してきた米投資ファンド・ローンスター傘下のゴルフ場運営会社。127コース(12年3月末)を持つ国内2位だ。ローンスターは昨年11月、PGMをパチンコ・パチスロ機械大手の平和(東京・台東)に売却した。
平和はTOB(株式公開買い付け)を実施、ローンスターが保有するPGM株を取得。買い付け総額は649億円。平和はPGM株の80.48%(11年12月末現在)を保有して経営権を握った。PGMを子会社化に組み入れた平和は、アコーディアの取締役だった神田氏をPGM社長に招聘した。平和の経営権は、創業家から離れている。
平和の創業者は中島健吉氏(91)。一代で平和をパチンコメーカーのトップ企業に押し上げ、「パチンコ王」と言われた。だが、晩年は内紛に悩まされる。90年代後半のことだ。健吉氏の後を継いで社長に就任した長男の中島権氏と、警察官僚から天下りした渡辺秀男副社長が対立。権氏は退任に追い込まれた。後任には権氏の弟で、医者をしていた中島潤氏(58)が社長に就任。石橋保彦副社長(65)と組み、渡辺氏に対抗し、渡辺氏を退任に追い込んだ。こうした権力闘争に明け暮れることに、医者の潤氏は嫌になったのだろう。社長を辞任、後任社長に石橋氏を選び、相談役に退いた。中島一族は経営の第一線から去った。
これで中島健吉氏は、保有している平和株の売却を決断する。社長の石橋氏が、懇意にしている同業者のパチスロ機メーカー・オリンピア(非上場)会長の石原昌幸会長(63)につないだ。石原氏は復帰前の沖縄で、カジノ式スロットマシンの店から身を立てた人物だ。
<平和の新オーナーは「ゴルフ王」になる野望>
07年8月、平和が株式交換方式でオリンピアの全株式を取得して、完全子会社化。同時に、オリンピアの持ち株会社である石原ホールディングス(HD)(石原昌幸社長)が、中島一族の資産管理会社中島ホールディングスが保有する平和の株式を460億円で譲り受けた。石原HDは平和株の35.27%を持つ筆頭株主で、石原昌幸氏(5.00%)など親族の分を含めて46.08%を保有する(11年9月末現在)。
平和の新しいオーナーになった石原氏は、長期低落傾向のあるパチンコ・パチスロ機事業から「総合レジャー産業」への脱皮を目指すことになる。その第一歩が、ゴルフ場運営会社PGMの買収である。実は、石原氏はアコーディア株の3.1%、オリンピアは1.9%を保有する大株主(11年9月末現在)。このことから、石原氏がアコーディアの前取締役神田氏をPGMの社長に起用した意図が見えてくる。"アコーディアの買収"だ。PGMとアコーディアを傘下に収め、「ゴルフ王」になる野望を抱いているのである。
4月16日、石原氏と竹生氏のトップ会談が行なわれた。経営統合の話し合いは決裂。この交渉が決裂した翌日、秋本専務による内部告発、さらに株主提案を矢継ぎ早に繰り出した。石原氏側(平和=オリンピア=PGM)は今6月末の株主総会で決着をつけるため、一気に勝負に出たのである。
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