<民主党の豹変に、怖さを感じる>
ある若手A県議は、毎月1回上京する。同じ思想を共にする同志たちとの勉強会に参加することが目的だ。また、中央の政治情報を収集する狙いもある。このA県議は、地方議員として心がけの良い部類に入る。中央にいたこともあり、『田舎ボケ』には恐怖を抱くのだろう。ところが、多くの地方議員は『井の中の蛙』で、A氏のような不安感を一度も抱くことなく、安閑と2期、3期と過ごしてしまうのであろう。
さて、このA県議が、民主党の豹変ぶりに驚きの色を隠さない。
「民主党の思想原点は、反原発だったと思います。ところが、今や以前の自民党時代よりも強引に、原発再開に直進しています。そして、コロコロと方針が転がるのがいけませんね。経済産業省の枝野幸男大臣は、もともと原発再開に慎重だったはずです。それがどうしたことか、一夜にして"再開推進派"に転じています。親分の仙谷由人政調会長代行の命令があったのではないでしょうか」。
「聞くところによると、民主党政権、政府の政策決定の場所には、この仙谷氏は政調会長代行という変則な肩書なのに必ず立ち会って、キーマンになっているようですよ。昔は人権派弁護士を売り物にしていた人物が、経済産業省の代弁者に成り下がってしまったことには呆れますね。やはり仙谷という男は、権力志向の政治家なのでしょう。役人たちも嗅覚が鋭いですね。誰が頼りになるか見極めます」とA議員に相槌を打った。
「こうなると、民主党の【政権交代】という公約が白々しくなってきました。国会で多数派を取れば簡単に意のままになる【政権交代】が実現するという、世間知らずの長閑な思考には吐き気を覚えます。民主党の政治トップの連中が、国家権力にはまったく無防御で組み倒されてしまう現実を目撃するにつけても、そら恐ろしさを感じる次第です。自民党政権時代には、ここまで役人たちの手の内で踊らされることはなかったはずです」。
<役人たちは、己の利権死守のために命を張る>
A県議に、次のような説明を行なった。
道路公団が民営化されて、全国に分割、民間企業に再組織された。この各企業の要職には、国土交通省の役人たちが天下りをした。当然、非効率な経営を行なっていたため、「何のために民営化か!!」という批判の嵐が起きた。そのため、当時の前原国土交通省大臣は、役人の意見を聞かずに自身の経済人の人脈から社長を抜擢した。この仕打ちに対して、関係する役人たちが逆恨みをしたことは、必然的な成り行きである。
前原大臣はもういない。役人たちは"鬱積を晴らすチャンス"と行動に移した。「業績が悪い会社の社長は責任を取ってもらう」という名分で、業績の良い1社を除いて社長の首をすり替えてしまった。ただし、彼らも賢明な奴らである。社長には意に沿う民間人を抜擢した。「役人たちは、国家権力に吸いつく"ガン"です。自分らの利権が脅かされるようになると、ヤクザよりも強い執念・憎悪を剝き出しにして攻撃をかけてきます。侮れませんな」と慰めた。
次のような言葉も付加した。「2011.3.11以降、【原発再開は絶対、許されない】という国民の強固な合意はできたと認識していいですよ。経済産業省の役人たちがいかに姑息な画策を行なっても、原発再開稼働は容易には実現できません。国家権力は揺らいでいます」と。
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