国内飲料業界で過去最大規模のM&A(合併・買収)である。大型連休を前にした4月27日、アサヒビールなどの持ち株会社アサヒグループホールディングス(HD)は、味の素の100%子会社である清涼飲料大手のカルピスの買収を検討していることを明らかにした。味の素も同日、売却を検討していると発表。買収額は1,000億円規模となる。飲料業界再編の開幕である。
<M&Aで気を吐くアサヒ飲料>
アサヒ飲料は10年ほど前、赤字経営が続き、飲料事業の売却の噂が出るほどの弱小企業にすぎなかった。下位集団の常連だった同社が大変身するのは2007年10月。アサヒビール(現アサヒグループHD)がアサヒ飲料のTOB(株式公開買い付け)を実施、完全子会社にしたこと。「飲料業界で10%のシェア」の目標を掲げ、3本柱に経営資源を集中。3本柱とは、缶コーヒー「ワンダ」、ブレンド茶「十六茶」、創業事業である「三ツ矢サイダー」などの炭酸飲料である。
そして今回は、事業買収ではなく、カルピスまるごとのM&Aだ。カルピスの買収により、「12年に年間シェア10%達成」という所期の目標を達成することになる。
<市場の成熟で、再編が加速>
飲料業界の国内市場は成熟しており、2000年以降、年平均成長率はマイナスで推移している。富士経済の予測によると、12年の飲料市場規模は前年比0.9%減の4兆7563億円の見込み。東日本大震災で東北地区の自社工場や包材工場が被災した影響で生産が落ち込み、11年の総販売量は減少したが、今年はさらに下回ると予測されている。
人口減少による国内市場の縮小という深刻な問題を抱えるなかで、飲料業界が活路を求めているのはM&Aだ。キリンとサントリーの統合は幻に終わったが、飲料業界は、ここ数年、買収劇が相次いだ。伊藤園はヨーグルト製品のチチヤス乳業、コーヒーのタリーズを買収している。サッポロホールディングスも昨年、ポッカコーポレーションと経営統合した。今年4月には、仏食品大手ダノンが乳酸菌飲料首位のヤクルト本社に対する出資比率を20%から28%に引き上げると報じられた。
カルピスを買収するアサヒに抜かれるキリンビバレッジはどんな手を打つか。下位のJT(日本たばこ産業)傘下のジャパンビバレッジや、独立系のダイドードリンコはどう動くか。
飲料業界の再編は一気にヒートアップする。
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