著者は、「ルポ 貧困大国アメリカ」で有名になった、新進気鋭の女性ジャーナリストである。3.11以降、"日本のジャーナリスト"の国民を欺く、隠蔽、矮小化体質は、各方面から強く批判されている。そして、その際に、理想の姿として、"欧米のジャーナリスト"の例を出されることが多かった。しかし、この本を読むと、素晴らしい伝説が数多く存在した"米国のジャーナリスト"は、9.11以降大きく変わり、信頼に値しないことが判る。
「9.11以降、アメリカでは、政府とマスコミと専門家が一気に国民の敵になった。3.11以降の日本は全く同じ状況だ」、「9.11以降、"アメリカンドリーム"は死語になった。現在のアメリカは1%の超富裕層が、99%の人間に負担を全て押しつけて異常な利益を手にする狂った仕組みが支配している」と著者は言う。
さらに、著者は、9.11、3.11、アラブの春、TPPが全て同一線上にあるという大胆な捉え方をしている。それは何故か。
"腑に落ちない"ニュースがあったら、カネの流れをチェックする。その国際機関、専門家、市民団体、運動家の資金源はどこなのか。現在は嘘と真実を見分けるのは年々難しくなってきている。技術の進歩が余りにも速く、映像や写真をパッと見て、その信憑性を見抜くことも難しい。
WHOは2年前から「原発の人体への影響を担当する放射線健康局」を閉鎖しており、実質的な調査権限が原発推進機関であるIAEAに一本化されている。
WHOの運営資金は、原則加盟国政府からの拠出金で賄われることになっている。ところが、ここ10年で、民間企業からの助成金が急激に拡大し、今では国連予算の倍の資金を私企業から受け取っている。
昨年11月、国連決議のうえ、リビアのカダフィ大佐は2万回以上の出撃と8,000回近い爆撃を受けて殺された。しかし、「リビアは当時、アフリカ大陸で一番は勿論、ブラジル、ロシアよりも生活水準が高く、高学歴、高福祉の国で、教育も医療も無料であった」ことは知られていない。当時、反政府団体を米国が「人道主義・民主主義」のもとに、水面下で支援していた話は有名である。どこに真実が存在するのか。その後、アフリカ最大の埋蔵量を誇ったリビアの石油資源や144トンもの金は誰の支配下になっているのか。
ロイターなどアメリカの通信社のフィルターを経て入ってくるニュースを垂れ流ししている日本のメディアからは真実は掴めない。自分で調べてみるべき時期にきているようである。
8億以上のアカウントを持つフェイスブックも、2億人のユーザーが利用するツイッターも民間企業だ。政治から中立と考える方が不自然である。政府がネット企業に個人情報を求めることは、今や常識である。
<プロフィール>
三好 老師 (みよしろうし)
ジャーナリスト、コラムニスト。専門は、社会人教育、学校教育問題。日中文化にも造詣が深く、在日中国人のキャリア事情に精通。日中の新聞、雑誌に執筆、講演、座談会などマルチに活動中。
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