今年1月、東京都消費生活総合センターに「中学1年生の息子がスマートフォンから有料のゲームを使い、約80万円の請求が来た」と相談があった。少年は、父親がスマートフォンを使うために登録したクレジットカードを利用してガチャにつぎ込んだ。ゲーム内だけで使う通貨をクレジットカードで買ったわけだ。ガチャで5万円、10万円請求されたという相談が急増しているという。
ソーシャルゲームで使う通貨やアイテムを、サイト外で現金で売買する「RMT(リアル・マネー・トレード)」が横行。レアアイテムをオークションサイトに出品し、入金と引き換えに、交換する方法が知られ、いくつかのアイテムをまとめて10数万円の値がつくケースもある。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券は今年3月、13年のソーシャルゲームの市場規模予測を4,320億円から5,766億円へと大幅に上方修正したものの、「大当たりが出る確率を楽しむパチンコと、ある確率のもとで有料ガチャを引いて、レアカードを集めるソーシャルゲームは似ている。現金化への期待から、大金を出す動機が働く」と警告を発した。
<異常、小・中学生からカネ取り放題>
問題が大きくなり、業界がようやく対策に乗り出した。
グリーとDeNAは、4月23日、未成年ユーザーに対する課金額の上限を導入すると発表した。グリーは、15歳未満のゲーム内通貨の購入可能額を月額5,000円以下、16~19歳は1万円までに制限。モバゲーを運営するDeNAは、18歳未満は月額1万円まで、15歳以下は月額5,000円までとした。
しかし、年齢は自己申告制だ。どうやって年齢をチェックできるのか。15歳未満の上限が年間6万円というのも、まだ高すぎるという指摘もある。
消費者庁が課金システムをめぐり、厳格な規制に乗り出すとの観測が強まっていた。公的規制が入り、課金システムに制約がつけば、業界には大打撃になる。遅ればせながら未成年者への自主規制を打ち出したのは、自浄能力を見せることで、何とか公的規制を免れたいというのが"ホンネ"であった。
DeNAとグリーは、有料課金収入がゲーム事業の売上の9割を占める。有料課金の伸びが業績を牽引した。DeNAの12年3月期の営業利益は615億円。ゲーム内の仮想通貨「モバコイン」の消費額が1,000億円を超え、1年前に比べて倍増した。
倍々ゲームの快進撃を遂げたのがグリーだ。本業の儲けを示す営業利益は、08年6月期には10億円にすぎなかったが、翌期から83億円、195億円、311億円と駆け上がり、12年6月期には約900億円を見込むまで急膨張した。
消費者庁が、コンプガチャは違法との判断を下せば、課金バブルでパンパンに膨れた風船に突きたてられる"針の一刺し"になる。風船が破れ、課金バブルが弾ける。影響は営業利益で40~50%に達する可能性もある。違法となれば、返還請求リスクも高まる。
そもそも、小・中学生からカネ取り放題という"ボッタクリ商法"が野放しされてきたこと自体が異常だった。ガチャ課金で急成長してきたソーシャルゲーム業界は、重大な転機に直面することになった。
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