世界で称賛をあびているこんにゃくメーカーが、福岡県大牟田市にある。「バタ練り」といわれる伝統製法にこだわる「石橋屋」だ。
同社は、明治10年創業の老舗だが、実は機械による大量生産を選んだ時期がある。しかし、特徴のない商品は価格競争を余儀なくされた。「自信を持てない商品は売れない」と4代目・石橋渉氏は「バタ練り」への回帰を決意。高額で導入した設備を廃棄して創業来の製法に徹した。「バタ練り」とは、こんにゃく芋を職人自らが練り上げる過程で金属製の羽がバタバタと音を立てることから、この名がついた。
商品への反響は、むしろ中央の方が高かった。大手メーカーの高い評価に手ごたえを感じた石橋氏は、全国の百貨店に飛び込み営業を行なった。今では、東京・大阪・名古屋などの有力百貨店や各地の高級スーパーに、石橋屋のこんにゃくが並ぶ。そして現在、その評価は国境を越えている。
<ものづくり日本大賞受賞>
1990年にシンガポールの日系百貨店の九州フェアに声がかかった。すると、日系やアジア系の消費者の間で評判を呼んだ。しかし、海外でも間違いなく売れるという手ごたえを感じた一方で、「まったく食習慣が異なる欧米人には受け入れてもらえなかった」という。色や匂いなどに抵抗があったからだ。ここで、商品への思いが人一倍高い石橋氏の心に、火がついた。欧米人シェフのアドバイスを元に、赤・黄・緑のこんにゃくを考案。穀物と野菜を混ぜて、パスタタイプの商品を作り上げた。日本人には思いもよらぬ「こんにゃく」だが、まったく価値観の異なる消費者の声を聞くことでイノベーションにつながった。ニューヨーク進出時の店頭販売では、「売れ残ったら買い取り」という条件でテスト販売。見事、完売してみせた。サンフランシスコやLAなど北米のほか、スイス、スペインなどのヨーロッパ、オーストラリアなど、世界各地に広がった。先ごろ東南アジアの高級ホテルで開催されたコンペでは、国内勢食材で唯一採用が決定したという。
さらに、この「雑穀こんにゃく麺」の開発により、今年2月に「第4回ものづくり日本大賞」で九州産業局長賞を受賞している。
販売先を15カ国まで増加させた石橋氏は、すばらしい商材を持つ中小企業のために「輸出連合のようなものができれば」と、自分の成功体験を還元する意欲を持つ。「食べてみて感動を与える商品でなければ売れない」――石橋社長の挑戦は続く。
<COMPANY INFORMATION>
■(有)石橋屋
代 表:石橋 渉
所在地:福岡県大牟田市大字上内529
創 業:1877年
設 立:1992年
資本金:800万円
TEL:0954-58-6683
FAX:0954-58-7930
URL:http://konjac.jp/company.html
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