<処理委託の構造的問題>
現在、PCB処理を請け負っているJESCOは、もともと環境省の外郭団体である環境事業団であり、特殊法人改革後に、政府全額出資の特殊会社となっている。国が設備費、運転資金として約4,000億円を出資し、PCBを保有している事業者、国、地方自治体と協力のもとに、PCB廃棄物の処理を進めている。
JESCOが第三者から委託を受け、PCB廃棄物の処理を請け負うかたちとなっているが、実際に処理に携わっているのは、JESCOから委託を受けた業者だ。東京事業所では、三菱重工が請け負っている。北九州事業所では、新日鉄がその中心となっている。豊田事業所では、車載トランスなどの処理を行なっている業者が、トヨタ自動車と密接な関係を持っている。
処理の現場では、実質的に業者に雇われている作業員が処理作業を行なっており、構造は、「国(環境省)」→「JESCO」→「業者」へと、仕事を流す委託そのもの。専門家の間では、「JESCOの存在は必要ないのでは?」という見方もある。前述の国会質問においても、「JESCOは、天下りの受け皿となっているのではないか」と取り沙汰されたこともある。
10年、「公務員制度改革大綱」による公表事項として、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長のキャリアのある由田秀人氏が、JESCOの取締役に就任している。人材が環境省からJESCOに流れているのは、紛れもない事実である。
<30年間放置で世界と大差>
86年以降、カネカの持っていた焼却施設での処理は継続して行なわれず、国では、新たに燃焼式での施設立地を試みることになる。
しかし、39カ所で施設立地を試みたものの、いずれも地方自治体の許可が下りず、結局断念している。72年に通産省の行政指導により、PCBの製造中止、回収などが指示されてから、04年に北九州事業所の化学処理施設が稼働するまでの過程に、約30年もの長い時間を要した。
燃焼式処理を選択した欧米諸国では、日本でのPCB処理が停滞している期間に、濃度の濃いPCB廃棄物をあらかた焼却してしまった。アメリカ、カナダ、ヨーロッパなどの多くの先進国では、残っているのは濃度の薄いPCB廃棄物だけ。処理は順調で、ほぼ完了している。
だが、日本には約30年の空白が生まれた。施設立地模索の後、燃焼式を断念することになる。この放置された間に、98年の厚生省調査によると、約1万1,000台のトランス、コンデンサなどが紛失。保管されていたPCB廃棄物からの汚染物の漏えいもあったと言われ、環境汚染が深刻化した。仮に、鐘淵化学の燃焼方式で処理を続けていた場合、30年で2万4,000トンを処理した計算になり、JESCOの高濃度PCB対象処理量はすでに処理が完了していることになる。
環境省によると、「燃やすという選択はあった。そちらの方が、効率は良かったと思われるが、地元の理解が得られなかった」「施設を立地できなかった」というのが焼却施設立地を断念した理由。化学式の処理方法を選択し、欧米に遅れること約20年、国はようやくPCB廃棄物の処理について、舵を切ることになる。
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