4月18日、東京・原宿に洋服の青山がFCで運営する「アメリカンイーグルアウトフィッターズ」が日本初上陸を果たした。これで数年来続く外資系の低価格衣料品チェーンがほぼ出揃い、迎え撃つ日本勢との戦いはますます激しさを増す。大手メディアは「価格が安い衣料品ブランド」をすべてファストファッションのごとく紹介しているが、それは大きな誤解だ。ここでは各社のポジション整理をしながら、戦略の行方を検証する。
<高付加価値な商品をデジタル世代は求めない>
こうした外資系ファストファッションに対し、日本勢はどう戦っていくのか。日本でそれと言えるのは、専門店チェーンではしまむらやハニーズ、製造小売業ではクロスカンパニーの「アースミュージック&エコロジー」「イーハイフンワールドギャラリー」、遊心クリエーションの「イーブス」などだ。
そうした企業の動向をじっくり分析すれば直接競合はしないが、低迷が続く百貨店などの戦略にヒントが隠れていると思われる。
ファストファッションが急速に拡大しているのは、経済の衰退と貧困層の拡大、感性が退化したデジタル世代が大衆化して高付加価値を求める意識が薄れ、市場が途上国化しつつあるからではないか。
デジタル世代とは団塊ジュニア以下で、音楽や映像、ファストフードで育ち、CDやアイポッドで音楽を聴き、デジカメや携帯電話で映像を見る、アナログの良さなど体験したこともない年代。携帯電話やインターネットで手軽に衣料品を購入するのも、デジタルで感性が鈍磨された証拠といえば、説明がつく。
それゆえ、市場がグローバル化し先進国と途上国の生活水準がフラットになる中、日本だけが高機能で高付加価値な商品が売れると考えるのは無理がある。ジャパネットタカタの髙田明社長が指摘するように「家電や自動車は急速にボリューム(大衆消費)化していく」ことを考えると、今後は途上国と同質化していくと見るのが妥当だろう。そこにこそ、新たな商品開発や市場開拓のヒントがあると言える。
<マーケットシェアを確保切り崩しは容易ではない>
ファストファッションや低価格衣料品は、「顧客ターゲットが違うから、直接の競合はない」と、多くの百貨店や高級専門店の経営者は言い切る。確かに現時点ではそうかもしれない。しかし、中産階級が没落してしまった日本で、誰が5年先、10年先もそうだと断言できるのか。
もはや衣料品はかつてのように「いいものを長く着る」という耐久消費材から、「着られれば高くなくて良い」の消費材へと変わりつつある。また、ヒートテックなどの機能性衣料、単品を重ね着、着回しするスタイルの定着で、シーズン服の着方はずいぶんと変わってしまった。
ユニクロがデビューした時の評価は高くなかったが、身の丈に合って合理的な買い物をする消費者を完全に捕捉しそのシェアは揺るがない。もはや衣料品生産が発展途上国の主産業を構成し、バングラディッシュなどの低コスト地域へシフトしている現状を考えると、価格はまだまだ下がるだろう。
消費のボリューム化、グローバルスタンダード化という傾向から見ると、北京や上海に住む平均的な中国人の価格水準まで下がるのではないかという小売業者もいるくらいだ。
外資系、日本勢を問わずファストファッションは、多店舗によって販売効率は下がるが、低価格衣料品市場はアメリカンイーグルアウトフィッターズなどの進出によって、さらに拡大していくのは間違いない。一定のマーケットシェアが押さえられたわけで、これを高額品が切り崩すのは容易ではないと考える。
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