<現ルートで投資の妥当性は十分>
歴史的経緯から、マレー半島における運河計画候補のルートは10本以上におよぶ。そして、現在は"産業革命家"J氏の率いる「クラ地峡新運河」プロジェクトチームが推奨するルートが最善と考えられている。
同プロジェクトチームは、現段階の調査結果を踏まえ、開発効果を以下の7つに分けて考えている。
1、建設工事による雇用増、所得増
2、船舶の輸送費用と輸送時間短縮(通航便益)
・クラ運河航行による輸送費用節減
・クラ運河航行による輸送時間短縮
3、新運河による航行安全性の向上
・マラッカ海峡通航回避によるリスク減少
4、コンテナ港湾立地による物流効率効果(コンテナ便益)
5.造成地の商工業立地による地域開発効果
・掘削土砂による用地造成と商工業立地(用地便益)
・タイ南部の地域開発と中継港拠点として第二のシンガポール
6、新運河への観光入込客数の増大(観光便益)
7、ASEAN海上交通網の隘路解消
<若者よ!「世界地図」を持って外に出よ!>
この取材にあたっては、現実的であるなかに"ロマン"も感じられ、実に爽快であった。ただし、記者は取材中に、たびたび"産業革命家"J氏に怒られている。以下はその会話の一部である。
J氏 これは、地政学上、必要不可欠な地球規模のプロジェクトである。今世紀には、仏国でも、英国でも、必ずどこかの国がやる。だから、日本がやるべきなのだ。私は、日本にいても、海外に行っても、絶えず"世界地図"は忘れない。自分を刺激しているのだ。
記者 各国が狙っているということは、よほど凄い経済的利権が絡んでいるのですね。
J氏 そういうケチな根性の奴には、この話題を書いてほしくない。スエズ運河でも、パナマ運河でも、最初は利権が絡んでいたのかもしれない。しかし、必然性と普遍性のないものが長く続くことはない。自然の流れのなかで、必要とされたから生まれたのだ。その国の人々、通航する船にはもちろん、地球市民にあまねく役に立っていくし、いくべきなのだ。それが、"地球規模のプロジェクト"である。
最近、記者が別件で取材したなかで「日本の若者の海外離れ」というキーワードがある。たとえば、日本人の米国への留学者数は大幅に減っており、中国13万人、インド11万人、韓国7万人に対し、日本は6万人(ピーク時は8万人)と言う結果である。さらに、産業能率大学が3年ごとに実施する「新入社員のグローバル意識調査」(2010年)によると、2人に1人が「海外で働きたくない」という結果だ。
最近、文部科学省は、海外留学に積極的に取り組む大学への支援として、5年間で総額数百億円の血税を使うことを決めた。これはおかしい。海外は、強制されて行くところではないのだ。それより、自分への反省も含めてだが、若者には「世界地図」を常時携帯することを推奨してみては如何だろうか。理論を頭で考えるのでなく、世界を"五感"で感じるような生活を日常からしていないと、"世界"は縁遠くなってしまうものだ。
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