4月18日、東京・原宿に洋服の青山がFCで運営する「アメリカンイーグルアウトフィッターズ」が日本初上陸を果たした。これで数年来続く外資系の低価格衣料品チェーンがほぼ出揃い、迎え撃つ日本勢との戦いはますます激しさを増す。大手メディアは「価格が安い衣料品ブランド」をすべてファストファッションのごとく紹介しているが、それは大きな誤解だ。ここでは各社のポジション整理をしながら、戦略の行方を検証する。
<日本上陸から4年で徐々に見えてきた黒船の翳り>
では、H&M、フォーエバー21といった外資系低価格衣料チェーンが、今後も日本市場を破竹の勢いで席巻していくかと言えば、必ずしもそうとは限らない。
実際、両社の福岡天神への出店では、土曜日にも関わらず早朝からの行列は見られず、開店後の入場制限がなされることもなかった。話しの種に既存店で買い物したお客は少なくなく、天神出店では日本初上陸時のように買い物客が溢れ、それがお客の購買意欲をかき立てるような雰囲気にはならなかったようだ。
実際、H&Mの坪効率を見ると、08年9月は銀座、原宿の2店舗平均で月100万円以上を稼いでいたが、11年度第1四半期では25万円まで低下。今期はこれ以上下がることはないだろうが、日本上陸直後に比べると、4分の1まで急落しているのである。
天神店で購入したお客に話しを聞くと、「H&Mのブームは落ち着いたし、大量な在庫を見ると慌てて買い物する必要はない」との答えが多数。3月には、H&Mのキャナルシティ博多店に久々行列ができていたが、それは同社がイタリアの高級ブランド「マルニ」とのコラボレーション商品を発売したからである。
こちらは商品の種類や在庫点数が限られていたこと、またコストパフォーマンスの良さに引かれたアダルト層のピンポイント需要を喚起したに過ぎない。客層が重なる百貨店にとっては痛かったかもしれないが、作りすぎれば顧客離れを招き、話題が提供されなければお客をつなぎ止められない点は、諸刃の剣と言えそうだ。
<外資が狙うFF市場が日本には存在するか?>
フォーエバー21はまだまだ出店の余地はありそうだが、H&Mの既存店が右上がりに売上げを伸ばせるかと言えば、そう簡単ではないだろう。同社は今期、日本で15店舗を出店すると発表したが、となると希少性が薄れ1店舗あたりの売上げ、坪効率が落ちるのは目に見えている。
それ以上に日本の消費者の熱しやすく冷めやすいのは、筋金入りだ。まあ、実際に買ってみたものの、あの品質ならユニクロやしまむらの方が良いと感じた消費者も少なくないはずだ。
だから、両社のような外資系が増収を続けていくには、品質をもう少し向上させることが必要になる。もっとも、外資系企業だけにその辺のマーケティングリサーチはきちんとしているようで、H&Mは日本ではクオリティ・マネージャーという品質管理の責任者を置いているという。
日本は特殊で、これまでトレンドで、なおかつボリュームという市場は存在してこなかった。トレンド市場は価格が高いブランドや高級専門店が押さえ、ボリューム市場はユニクロやしまむらが攻略してきたからだ。そのため両者を合体させた衣料品が今後も引き続き日本市場を攻略していけるとは考えにくいという意見もある。
しかし、少子高齢化が加速する中、これから消費の中心を担う若者が安さ慣れしてしまったのも事実。消費がボリューム化し、生活標準が途上国化している日本で、独自の市場が今後も維持されるとはとても考えにくい。このまま手を打たなければ、低価格衣料品はますます隆盛を極めていくはずである。
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