県や市町村の公共施設における耐震診断の急増を受けて、民間への再委託を行なったという福岡県の外郭団体・(財)福岡県建設技術情報センター(以下、建技センター)。その受託収入のほとんどは県や市町村から(2010年度は約88%)。ここ数年の余剰利益によって現金預金5億円、目的が不明な2種類の積立金4億円の計9億円がプールされた実態を報じた。
目的不明の積立金については、県が行なっている公社等外郭団体の経営評価で、外部専門家から5年以上、「目的を明確にすることが必要」と指摘され続けていた。なぜ、こうも変われないのか。組織のトップが県の天下り、正規職員がすべて県からの派遣職員という事実上の『県の出先機関』という同センターの組織体質から分析する。
経営評価における『外部専門家の意見』では、積立金の目的の明確化という指摘で、09年度から11年度まで、「公益法人制度改革への対応に向けて、特に試験研究積立預金及び運営強化積立預金の積立目的等について明確にすること」という、まったく同じ文言が続いている。
また、08年度においても「特に試験研究積立預金及び運営強化積立預金の積立目的等について明確にすることが必要になる」とほぼ同じ文章。07年度では、「特に試験研究積立預金及び運営強化積立預金の積立目的等について明確にすることが必要になると考えられる」。06年度は経営評価結果の欄に「運営強化積立金の積立目的、積立額の明確化などが求められている」とある。
変化のない指摘し続ける外部専門家の仕事ぶりにも疑問を感じずにはいられないが、それだけ、建技センターの問題は明確であり、一方で何ら改善が見られなかったことを示している。結局、何ら改善が見られないまま、9億円という税金がプールされたのである。
公益目的が主の財団法人である建技センターは、余剰利益を職員に還元することができない。しかるべき社会に資する事業にあてられなければならないが、これまでの建技センター理事会は、その決定をしてこなかった。"使いみちが決まっていない"というのではなく、"決めようとしなかった"のである。
建技センター理事会は、現在、県の天下りが就く理事長と専務理事の2名が常勤役員。残りは県幹部や業界や外部有識者の10名で構成される。公社等外郭団体の経営評価が始まった02年度以降、理事長および専務理事は2~3年で交代(ただし、02年度から05年度までは県土木部長が務める非常勤のポスト、また、06年度から08年度までは県の天下りが理事長と専務理事を兼務)。
組織のトップが2、3年で交代するという目まぐるしさである。そして、前任者が残した、"積立金の目的を明確化するという課題"に取り組む者はいまだ現れていない。「面倒なことは先送り」というのは任期が短い天下りトップの性質、あるいは組織に対する問題意識が欠落している。常勤役員の平均年収は10年度で669万8,000円。まさか、イスに座って2、3年過ぎるのを待つだけでこれほどもらえるというワケではないだろう。
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