「みんなのエネルギー・環境会議(MEEC)」のパネルディスカッションが9日、佐賀大学本庄キャンパスで開かれ、「原発をどうするのか?」をテーマに議論された。主催は、佐賀大学の学生らでつくる「MEEC in SAGA実行委員会」。
原発の推進・反対など異なった立場の第一人者がパネリストを務め、「原子力ムラ」の名付け親といわれ、「脱原発依存」に取り組んでいる飯田哲也・環境エネルギー政策研究所所長、「原発保守派」の澤田哲生・東京工業大学助教(原子炉工学研究所)、枝廣淳子・幸せ経済社会研究所所長、澤昭裕・国際環境経済研究所所長、環境広告サステナ代表のマエキタミヤコ氏、九州大学の工藤和彦特任教授、医師の満岡聰氏が直接対論し、原発とエネルギーの未来について問題提起した。
音楽プロデューサーの小林武史氏がビデオメッセージで、「3・11後、多くの国民の関心がここまで高くなって、簡単に(原発)再稼動を容認しないということになったのはすごく喜ばしいことだと思ってきた」「稼動したとしても、検証が大事で、稼動し続けることを容認するのではなく、関心を持ち続けることが大切なのではないかと考えています」と語った。
飯田氏は、「事故原因究明や体制見直し、基準見直しなど再稼動の前に本来やるべきことが行なわれていない」と、野田首相の再稼動判断を批判。「壊れない、(放射能を)閉じ込められる、被曝を防ぐ、事故が起きたら損害賠償できる」の条件を埋められないと再稼動できないと述べた。一方、澤田氏は、福島第一原発4号機の現状、安全に停止した同6号機や女川原発との違いなどを紹介。「玄海2号機のストレステストの結果をみると、いい結果を出している」として、再稼動の安全性を強調した。また、澤氏は、「魔法の杖はない」として、火力・原子力・天然ガス・自然エネルギーの電源それぞれのメリット・デメリットを踏まえてどう組み合わせるかの選択肢を考えてほしいとよびかけた。
第2部では、「玄海原発をどうしたいか」をテーマに、参加者が6人程度ずつ約15のグループに分かれてカフェ形式で議論した。MEECはこれまで京都、札幌、広島など各地で開かれてきたが、グループディスカッションは初めて。
グループディスカッションでは、「再稼動せず、廃炉にしてほしい」「すぐに廃炉したいが、現実的なのか疑問」「段階的に自然エネルギーに切り替えていく」「事故のリスクが大きすぎる。廃炉にすべきだが、期限付き再稼動をし、(原発に依存している)地元の雇用や生活保障を整えて廃炉にする」など様々な意見が出された。各グループは多数決で決めるのではなく、合意形成をめざして議論を繰り広げた。パネリスト各氏も1参加者として議論に加わった。
MEECは、2011年7月、飯田、枝廣、小林、澤、澤田各氏、九州大学の吉岡斉副学長らが発起人となって設立された。原発の推進や反対など特定の立場を打ち出すのではなく、エネルギー政策をつくるプロセスそのものを国民に開かれた場にし、さまざまな立場の人々がエネルギーの今後について考え、議論・対話する場をつくることをめざしている。
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