組織のトップが、2~3年で入れ替わっている(財)福岡県建設技術情報センター(以下、建技センター)。課題の解決を先送りにしてきた理由には、実質的に"責任者不在"という天下り法人の特質が顕著に出たものと考えられる。さらに建技センターは、組織のなかで半分以上を占める職員までが、短期間で入れ替わるという特徴があり、そのことも課題の解決が先送りされてきた背景にあるのではないだろうか。
建技センターの職員は、半分以上が県からの派遣で残りは嘱託か臨時。プロパーはゼロとなっている。派遣されている県職員は、「公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律」の第3条によって、派遣期間を3年(5年まで延長可)までと定められている。つまり、上も下もほとんどが3年以内に変わってしまう。
目的不明のまま積み重なってきた貯蓄について、同センターの関係者に理由を問い質すと、一様に「そんなことを私に言われても...」という様子が感じられた。申し送られた課題は年々大きくなっており、リスクを負って解決しようという人間が後に現れないのも仕方がないことかもしれない。
要は"組織の仕組みに問題がある"のである。
建技センターは、税金を原資とする県や市町村からの受託収入の一部が、余剰利益となって、使いみちが決まっていないまま、プールされているという現象が発生した。トップが短期間で代わる天下り法人の問題は、それ以外にもある。「責任者不在」と言える組織において、悪化するのは職場の雰囲気やモラルだ。
ある第3セクターの嘱託職員は、「コネで入ったプロパーが仕事もしないで幅を利かせ、人の悪口を言うなどして忌み嫌われている。しかし、上司は県からの派遣で、もめ事には関わりたくないのか見て見ぬふり。いずれ異動になるからトラブルを避けたがる。すぐに代わるトップなんか、いるのかいないのかわからない」と、実情を語る。
「建設技術に関する調査・研究、建設技術水準の向上、建設資材の品質の向上などに関する事業を行なうとともに、福岡県建設技術情報センターの特性と機能を生かした事業を行ない、もって後世に誇りうる質の高い社会資本の整備に寄与すること」を目的とする建技センターは、すでに事業の半分以上を民間に任せており、また、センターの施設は、県の指定管理者として管理している。組織の存在意義について「技師がいない市町村において民間の仕事を評価する存在が必要」というが、現状を見るに、独立した団体でやる必要はないように見える。
2013年11月末での公益法人化を目指す建技センターだが、その時、約9億円はどうなるのだろうか。福岡県は12年度予算における行財政改革で、同団体を含む17の公社等外郭団体に対し、基本財産の返戻を要請するとしている。建技センターの基本財産は、11年3月31日時点で、定期預金7,001万7,543円と福岡県債や国債などの投資有価証券1億2,998万2,457円の計2億円。現金預金(流動資産)の5億円と2種類の積立預金(特定資産)の計4億円を一体どうするのか。 "プールされた税金"の行方を今後も注意深く見る必要がある。
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