国家戦略として、バイオエタノール燃料の実用化を成し遂げたブラジル。今、ガソリンに代わる自動車の燃料としてアメリカやヨーロッパでも需要が高まってきている。世界に先駆けて着手し、クリーンエネルギーをモノにしたブラジル。いかにして、バイオエタノール燃料先進国としての地位を築いてきたのか。多くを石油に依存している日本の将来にとっても参考になるだろう。
<国家的戦略としてビジネス化>
ブラジルは、オイルショックに見舞われたのをきっかけに、1975年、国家的戦略「国家アルコール計画」でエネルギー転換政策を立ち上げる。ガソリンに代わる代替エネルギーとして、サトウキビを発酵させて作るバイオエタノールを生産、拡大してきた。一時、供給の不安定さ、コストダウンの難しさ、ガソリンでもバイオ燃料でも走れるフレックス車の技術や車種の不足などが理由で計画はとん挫しかけたが、90年代、原油価格の高騰とともに、ビジネスとしても確立。アメリカ、ヨーロッパなどに売り込み、現在、ブラジルは、世界随一のエタノール輸出国となっている。バイオエタノール燃料は、CO2の排出がゼロになるということで、地球温暖化対策の一つとしても世界的に熱い視線を浴びている。
ブラジルは、いかにしてバイオエタノール先進国としての地位を築いたのか。その現況と経緯を追う。
<ガソリンと自由に混合>
ブラジルには、現在、100%のガソリンはなく、法律で最低でも自動車の燃料には20%のエタノールを混ぜなければならないことになっている。ブラジルの自動車の多くは、再生可能なサトウキビで走っていると言っていいだろう。このところ韓国などの低価格の外国産車が輸入されており、割合は急上昇とはいかないが、03年ごろから普及し始めたフレックス車(ガソリンでもエタノールでも走れる自動車)の新車の割合は9割程度までに上がっている。2020年には、フレックス車の割合は、ブラジルで走る車全体の75%程度に到達すると見られている。
ブラジルでは、消費者が自由にガソリンとエタノールの割合を選んで入れることができる。駐日ブラジル大使館の通商部、高橋ウィルソン俊光補佐官は、「その日の値段を見て、エタノールを入れるか、ガソリンで走るかを消費者が決めます。車のモデルによって燃費は変わりますが、値段は大体ガソリンの6~7割程度です。サンパウロではガソリンが割高だとか毎日、新聞などで報じられます」と説明する。「『車の調子がエタノールの方がよくなる』という人もいて、多少割高でも、エタノールを入れる人も多いですね」
日本でもエネルギーの選択肢を増やすにあたって、ブラジルがバイオエタノールを輸出産業にまで成長させた過程は参考になるだろう。
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