まず、トランス類に使われたPCBは2012年3月時点で45.7%の処理がなされたに過ぎないのである。コンデンサ類は34%。まだまだ半分も達成されていない。加えて、微量PCBと呼ばれる、機器内に含まれるPCBの割合が低いものに関しては手つかずの状態が続いている。16年の達成など、夢のまた夢だったのである。そこで政府はPCBの処理終了目標を7年引き延ばし、23年とし直した。
問題点はいくつかある。まずは処理進捗が悪いということ。上述のとおり、12年かけて半分に達していないことがすべてを物語っている(処理施設の操業開始時期がまばらであるため、今後の処理スピードは上がる可能性もある。逆に、蛍光灯などの微量なPCBの処理に手間がかかるため、遅くなる可能性もある)。23年と目標を定め直したが、延々と引き延ばされることにもなりかねないのだ。
次の問題点は、処理費用が高いということ。普通、高圧トランスは一基300kg~400kg程度と言われている。仮に350kgの高圧トランスを、処理施設に持ち込んだ場合、162万5,000円もかかってしまうのだ(参照:PCB廃棄物の処理料金表(PDF))。軽減措置により、処理依頼者によっては7割引きされることもあるが、いずれにせよ高すぎる。これでは早く処理したい人でも、そのときの懐具合によっては処理できない状況が生まれてしまう。高い処理費用も延々と処理完了が引き延ばされてしまう原因になりかねないのである。
加えて、たとえばビルなどの地下にある電源室にトランスを設置している場合、一室を占領するほど大きさを持つものであることが多い。この場合、トランスを取り出すためには間口を広げるなどの工事が必要になる。そうすると、ただでさえ高い処理費用に工事費が上乗せされることになる。これも処理するモチベーションが低下してしまう原因になるだろう。
処理を独占しているJESCOの慢性赤字体質など、まだまだ数多くの問題点が内包されている。今回、紹介するリストは東京都内で確認されている分だけのPCB含有機器の所在地である。きちんと保管されているはずなので、そこにあるから問題というわけではないが、町の各所に猛毒が散らばっていることに驚かれることだろう。今後も弊社ではPCBの動向に注目していく。
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