民主党の小沢一郎元代表ら50人が7月2日、離党届を提出した。"小沢新党"の立ち上げはもはや秒読みだ。2009年総選挙マニフェストという「国民との約束を守る」として、消費税増税法案に反対票を投じたときから、覚悟の離党だろう。"小沢バッシング"にひるむことなく、政権交代の原点を堅持して、新党へ決起してほしい。
小沢氏には金権政治のイメージがあり、田中角栄元首相の影がつきまとうが、日本の経済と社会が高度成長時代と違うことをいち早く感じ取り、"革命的な改革"を打ち出した政治家は、小沢氏をおいてそういない。たどり着いた内容が、あの総選挙マニフェストであり、内需主導の経済社会であり、地域主権だった。
今、消費増税すれば、経済成長はおぼつかず、その結果、法人税収も落ち込み、税収確保のためにさらなる増税の悪循環に陥る。野田首相も自民党も、成長戦略は描けず、社会保障の姿も示せない。
小沢氏は離党届提出後の記者会見で、「国民の生活が第一の政策を国民に示し、国民が政治を選択する権利を何としても確保することこそ、混迷にあるこの国を救い...」と決意を述べた。今日的なテーマとして、3年前のマニフェストに加えて、消費税増税先行への反対や原発問題をあげた。
ところが、驚くのは、世論調査の結果だ。小沢新党に「期待しない」というのが8割近い。
小沢夫人の手紙なる週刊誌記事や「壊し屋」の軌跡が小沢氏のイメージダウンにつながったようだが、政治資金規正法違反に問われた陸山会事件の影響が甚大だ(一審・東京地裁で無罪、指定弁護人が控訴)。政権交代が期待された09年総選挙直前に民主党党首だった小沢氏を狙い撃ちにした国策捜査であり、政治介入・権利濫用と批判されてもおかしくない。検察とマスメディアの二人三脚で「小沢つぶし」を行なったようなものだ。
そのときには政権交代は実現したが、今も尾を引き、小沢新党結成に決定的なダメージになっている。
それにしても、"小沢バッシング"はひどすぎる。
政治的説明責任があることはすでに指摘してきたが、刑事事件としては確定してはいないが無罪判決が出ている。にもかかわらず、"灰色"扱いし、まるで有罪かのイメージを植えつけるのは異常だ。そもそも、検察庁として不起訴処分にしたにもかかわらず、特捜部が虚偽の捜査報告書まで作って検察審査会を利用して、強制起訴に持ち込んだ事件だ。起訴されるべきだったか、根本から疑問が生じている。
さらに、小沢氏の無罪によって消費税増税へのハードルが高くなったとの論調まで出た。権力監視の役割を、「小沢叩き」にすり替え、"増税翼賛会"に加担するようなものだ。
小沢氏は、具体的な新党結成時期は「まだ言える段階にない」としているが、次の総選挙では、民主も自民も議席激減、橋下維新の会など第三極が台頭するのは間違いない。小沢氏は、「オリーブの木」を構想していると報じられている。
政権交代第二幕に突入し、「二大政党」ではない、新しい政権を生む可能性がある。新党結成は、小沢氏が理念を国民に示すいい機会になる。
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