ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

濱口和久「本気の安保論」

現代の政治家は織田信長の戦略眼を持て(後)
濱口和久「本気の安保論」
2012年7月 4日 07:00
日本政策研究センター研究員 濱口 和久

<石山本願寺との11年戦争>
 豊臣秀吉が大坂城を築く以前、そこには親鸞上人の流れを汲む浄土真宗本願寺派の巨大寺院があった。
 明応5年(1496)、本願寺第8世の蓮如が、自らの隠居所として一宇の坊舎を建立したのが始まりで、当時は、大坂御坊、あるいは石山御坊と呼ばれていた。
 天文元年(1532)、法華衆との争いで、京都にあった本山・山科本願寺が焼失すると、第10世証如は、大坂御坊を本山として石山本願寺に改称する。
 この後、石山本願寺は寺域を拡張・整備していき、第11世顕如の時代には、門徒の勢力が全国へと拡大していくに従い、莫大な富を蓄え、土塁や堀を築いて強固な防御機能を備えた要塞と化していった。
 このことを危険視した織田信長は永禄11年(1568)、石山本願寺に対し、莫大な軍用金を要求するなど様々な圧力をかけ始めた。2年後、信長に石山本願寺の明け渡しを命じられたのを機に、顕如と長男教如は、信長との決戦を覚悟する。
 石山本願寺は11年もの長期にわたって、信長の大軍と戦うことになった。この合戦は石山合戦と言われ、特に天正4年(1576)から始まる第3次合戦は、織田軍の猛攻が4年間も続いた。

<大坂の地政学的重要性を理解していた信長>
 信長が、これほどまでに執念深く石山本願寺と争ったのには理由があった。
大坂は、奈良、堺、京都にも近く、近畿一円の商圏の中心であり、海運も盛んで、全国の富が集中していた。石山本願寺のある地は、南に大和川、北は淀川の両大河が外からの侵入を阻み、西には大坂湾が間近に迫るという天然の要害で、軍事上の要所でもあった。この地から大坂を統治するということは、すなわち日本の経済と軍事を牛耳ることを意味していたのだ。
 11年間にわたって抵抗を続けた石山本願寺であったが、天正8年(1580)、正親町天皇の仲介により信長と和睦し、顕如らは紀伊国鷺森(和歌山市)に退去する。その際、石山本願寺は不審火によって3日3晩燃え続け、灰燼に帰してしまう。
信長は、この跡地を整備すると、完成したばかりの安土城を嫡男信忠に譲る代わりに、天下に睨みを利かせるための新たな城(大坂城)の築城を信長の甥の織田信澄に命じる。実務は安土城の普請奉行を務めた丹羽長秀が担当した。
しかし2年後、信長が京都・本能寺に没すると、大坂城築城の夢は、信長の後継者となった秀吉によって引き継がれることになる。 
 信長がどのような城を築こうとしたかの詳細は判明していないが、安土城を遥かに上回る巨大な城郭であったことは間違いないだろう。
 現代の政治家も、信長のようなスケール観を持って、祭りごと(国の運営)を行うべきである。信長型の政治リーダーの出現を期待したい。

(了)

≪ (前) | 

■濱口和久氏の新刊「だれが日本の領土を守るのか?」 大好評発売中!
hamaguti_book_1.jpg 外交・安全保障のスペシャリストとして、NET-IB・濱口和久「本気の安保論」を連載している濱口和久氏が5月31日に発売した新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)が大好評発売中である。尖閣諸島、竹島、北方領土をはじめとする日本の領土問題について、地政学や歴史の視点を盛り込みながら、日中・日韓関係や国防を担う自衛隊の現状を解説する同書は、グローバル化が進む激変時代だからこそ、日本国民にとって必読の書と言える。同刊ご購入の申込はコチラ

<プロフィール>
hamaguti_p.jpg濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)が発売された。 公式HPはコチラ


※記事へのご意見はこちら

濱口和久「本気の安保論」一覧
濱口和久「本気の安保論」
2012年12月12日 07:00
濱口和久「本気の安保論」
2012年12月11日 12:35
「自爆民主党解散」シリーズ
2012年11月30日 12:13
「自爆民主党解散」シリーズ
2012年11月19日 10:35
濱口和久「本気の安保論」
2012年11月19日 07:00
濱口和久「本気の安保論」
2012年10月31日 15:25
濱口和久「本気の安保論」
2012年10月26日 10:41
濱口和久「本気の安保論」
2012年10月20日 07:00
濱口和久「本気の安保論」
2012年10月19日 10:31
濱口和久「本気の安保論」
2012年9月28日 10:22
濱口和久「本気の安保論」
2012年9月26日 10:22
濱口和久「本気の安保論」
2012年9月13日 10:07
濱口和久「本気の安保論」
2012年9月12日 13:20
濱口和久「本気の安保論」
2012年8月25日 07:00
濱口和久「本気の安保論」
2012年8月24日 14:27
濱口和久「本気の安保論」
2012年8月21日 12:00
濱口和久「本気の安保論」
2012年8月17日 10:00
濱口和久「本気の安保論」
2012年8月16日 14:33
濱口和久「本気の安保論」
2012年8月 3日 07:00
濱口和久「本気の安保論」
2012年8月 2日 07:00
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル