8日に行なわれた鹿児島県知事選、午後8時になったのとほぼ同時に出されたNHKの現職当選確実の報道に、新人陣営内で驚きの声があがった。それもそのはず、開票結果を見れば、現職・伊藤祐一郎氏39万4,170票に対し、新人・向原祥隆氏20万518票と、向原氏の健闘がうかがえる内容だったからだ。とくに鹿児島市に至っては、伊藤氏9万7,622票に対して向原氏7万3,223票と、接戦と言ってもよい数字が出ている。
一部を除き、投票が締め切られて開票が始まったのが午後8時。ほぼ同時に「当選確実」を報じる根拠は、ほぼ出口調査によるもの。鹿児島県の各地区で行なわれる投開票について、完璧と言える調査ができたのであろうか。投票締切と同時の当確報道には、その真意を疑いたくなるほど、今回の選挙においては不自然なものであった。
「感触はすごくいい。街宣をしていてもみな手を振ってくれる」と、市民ボランティアとして向原氏の応援活動を行なっていた男性は、選挙戦を振り返った。それだけに、開票開始直後の当確報道には納得がいかない様子だ。
NHKの当確報道が出た時、向原氏の事務所には、数名の支持者しか集まっていなかった。投票数がある程度確認できてからコメントをしたいという向原氏が、事務所に顔を見せたのが午後10時過ぎ。その頃には事務所が支持者であふれ返るほどの集まりを見せていた。当初は、絶望感にすら支配されていた向原事務所だが、開票結果の中間発表が出るごとに、次第に活気づいてくる。向原氏があいさつを行なっているなか17万票を突破したことが告げられると、会場は一気に沸いた。
「惨敗」が「善戦」へと変わり、集まった支持者は向原氏の健闘をたたえた。また、次は、同じく脱原発を掲げる飯田哲也氏が立候補を予定している山口県知事選であるとして、脱原発の戦いに手応えを感じ、展望を見出した様子がうかがえた。
「県政全般をふまえたうえでの結果」(向原氏)の通り、全国的に注目を集めているなかで40%を切った前回の投票率をわずかに上回った今回。おそらく脱原発の考えに同調しながらも、さまざまな理由で現職に票を入れた有権者も少なくはないだろう。また、5割に満たない投票率は、判断を決めかねた有権者の棄権という要素もあったように考える。
自分を破った現職に対し、「川内原発再稼働についての住民投票」を訴えた向原氏。テーマを再稼働にしぼった場合、鹿児島県の人たちがどのような判断を下すのか。県政運営において、そうせざるを得ない十分な結果が示されたかたちとも言える。
結果を見ると違和感が残る当確報道に対して、向原氏の支援者には「メディアによる情報操作」との怒りの声をあげ、現場の記者につめ寄る場面も度々見られた。誰のための報道なのか、関係者は今一度、原点に立ち返るべきだと考える。
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