任期満了にともなう鹿児島県知事選挙は8日投開票され、3選をめざした現職の伊藤祐一郎氏(64)が、「川内原発即廃炉」を掲げた脱原発団体代表・向原祥隆氏(55)を破って当選を決めた。
同選挙は、政府が大飯原発(福井県)再稼動を決めた後、原発立地県で初の知事選挙として注目されていた。伊藤氏の得票は、39万4,170票。向原氏は、立候補を表明してから短期間の準備で20万518票を獲得した。都市部の鹿児島市では向原氏が善戦。伊藤氏9万7,622票に対し、向原氏は7万3,223票を獲得。得票率で4割超まで現職を追い詰めた。首相官邸前の大飯原発再稼動抗議に呼応して、ツイッターやフェイスブックなどで「脱原発」を訴える市民ボランティアが県外からも集まり、勝手連的な支援が広がった。投票率は43.85%で、前回比で4.86ポイント増加した。
向原氏は集まった支援者を前に、「脱原発の代表が出てくる戦いは始まったばかり」とコメント。今回の選挙については、県政全般のことを考えたうえで現職の支持が上回ったとの見方を示した。そのうえで、「脱原発の民意を受けとめて、川内原発の再稼動については住民投票を行なってほしい」と、伊藤知事に注文をつけた。
向原氏の事務所では、開票結果が発表される都度、支援者のムードが高潮した。宮崎県から駆け付けていた支援者のひとりは「現職と新人の選挙で、よく票がとれたと思う。この結果を『再稼動容認』とは受け取ってほしくない」と、手応えを語った。
一方、当選した伊藤氏は、同選挙について「川内原発再稼動はせざるを得ない」としつつ、「原発は、投票行動を動かすだけの争点ではなかった」「県政は広範なテーマを持っている」と述べ、川内原発再稼動反対の県民投票ではないという見方を示した。また、「再稼動の支持を受けたという表現は使いたくない」として、「(再稼動へ)一つひとつ丁寧に説明し、過程を一つひとつ積み重ねて進めたい」と、繰り返した。
ただし、「個人演説会を50回開き、丁寧に説明した。自分の思ったたたかいができた」と自信満々に語った伊藤氏だが、現職が2期8年の実績と組織力を総動員した選挙戦を展開したにもかかわらず、組織力を持たない一市民運動家に肉迫された結果を見る限り、"薄氷の勝利"とも言えるのではないだろうか。
今後、伊藤氏自身が、川内原発再稼動へ前進したとの見方を否定したように、原発再稼動反対をはじめとして民意を踏まえた県政運営が求められる。なお、川内原発のある薩摩川内市では伊藤氏2万7,066票に対して向原氏1万4,100票と、向原氏の健闘がうかがえる結果となっている。
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