今回、取材で訪れた「あいりん総合センター」は、労働公共職業安定所、労働福祉センター、大阪社会医療センター附属病院が一体になった、あいりん地区では一際大きな建物だ。取材当日の悪天候もあってか、センター内には仕事にあぶれた労働者がそこかしこで横になっていた。その1人ひとりを見ていくが、いわゆる"働きざかり"の若年世代を見かけない。
周辺を歩いていても同様だ。路上でケンカに遭遇した。どちらも70代以上に見える老人だ。互いに胸ぐらをつかみ、罵り合っていたが2人の腕はやせ細っていた。
かつて、労働者のまちとして活況していた同地区は高齢化が進み、今や生活難民のまちへと変貌している。
「30年前は周辺道路を車が走れなかった」と、地元の人は言う。理由は、すぐに"あたり屋"と遭遇するからだ。ピーク時には3万人もいたと言われる同地区は、身を追われる人物の潜伏場所にもなった。
白昼堂々行なわれる賭博や麻薬売買などの犯罪行為。労働者による暴動もたびたび起こり、同地区のみならず、西成区全体へも悪いイメージが植え付けられた。それが若者を遠ざけ、急速な高齢化の一因にもなっている。
現在、労働者としての登録は6,000人を切った。資本である体が衰えると、できる仕事は減ってくる。労働者たちの老いと同時に、物価が安い同地区へ貧困層が流入。生活保護受給者やホームレスなどが増えている。
西成警察署裏の公園にはブルーシートのテントが密集。すぐ近くには小中学校があり、住民からはそれらの公共の建物に「安心して行けない」という苦情が寄せられている。その一方で、萩之茶屋南公園(通商:三角公園)では、ホームレス支援のためのバザーや炊き出しが行なわれている。
高齢化や貧困層の増加とともに、新たな問題が浮上している。
同地区には1泊1,000円から2,000円で泊まれる安宿が集積しているが、そのなかには生活保護受給者の賃貸住居へと変貌している物件もある。なかには『2畳1間・風呂ナシ・共同トイレ』で家賃が月4万円という、同地区では明らかに法外な物件も存在。ホームレスに「いろいろと面倒を見る」という"契約"で、受給した生活保護費のほとんどをピンハネする"貧困ビジネス"が横行しているのである。
行政はこの問題に対し、「民間内での契約には口を挟めない」という姿勢をとっている。
また、孤独死の問題も深刻化している。高齢化した労働者やホームレスには、身寄りのない人が多く、無縁仏となるのは毎年200人。一区画で2日に1人以上の死亡者が出る異常さを呈している。
| (後) ≫
※最新ニュースはコチラ⇒NET-IB トップページ
※記事へのご意見はこちら