原口一博衆院議員「エネルギーと金融の地方分権を」
債権回収会社の強引な取り立て被害があとを絶たない。銀行債務者の保護のための立法化に取り組んでいる「中小企業等金融債務者保護推進議員連盟」会長の原口一博衆院議員(佐賀1区)に、債権回収の問題と対策について話を聞いた。
<第1回>
<取り立ての対象ではなく、金融面から中小企業を支える>
――銀行が中小企業に融資した債権を債権回収会社に売却し、債権回収会社の取り立てが目に余る事例が九州で起きています。背景は何ですか。
原口一博衆院議員(以下、原口) 大きな流れで言うと、エネルギーと金融の独占寡占が世界的にものすごい勢いで新しいグローバル化のなかで進んでいます。まさに「むさぼるマネー」が世界を駆け回って、平均で3年に1回の大きな金融危機が起きています。富が偏在化し、本当の意味で富、価値を生み出している中小企業が金融債務者として、権利の主体ではなく、債務の取り立ての対象になってしまっている。このことを根本から変えないといけないと考えています。
エネルギーについては固定価格買い取り制度、地産地消ということでいわゆる分散化をうたっている。金融については、もともと金融再生法は、RCC(整理回収機構)に、住専という特別な、ある意味バブルに踊って土地ころがしや地上げをやった特定の人たち、公権力を行使しないと整理がつかない特殊な事例を対象にしていました。ほかの債権買い取りにまで広げるのを最初から議論した話ではない。
――広げる話は当初はなかった。
原口 そんな権限を誰が与えたのかということを、私たち言ってきたわけです。いわゆる金融再生法の53条買取についても、あるいは一般金融機関の不良債権にしても、そこまでの権限を与えるのは、法律の拡大解釈ではないのか。もっと言うと、金融円滑化法で各県も今、新しい経済政策をまとめていますが、たとえば埼玉県のように、連帯保証人なし・無担保融資を始めています。上田清司埼玉県知事も私たちと一緒に国会Gメンで、椎名(麻紗枝)弁護士と一緒にやってくださった。そうすると、埼玉県の中小企業貸し出しというのは日本一、前年比プラス19%です。関西圏の大阪府は9兆円落ちている。一番落ちている。経済状況はこういうデフレであるにもかかわらず、しかも埼玉県は連帯保証人なし無担保融資ということで焦げ付きがすごいのかというと、ちゃんと返済されている。だから、金融円滑化法の本当の根本の理念は、企業を守る支える、日本の心臓部である中小企業零細企業を金融面からも債務の取立ての対象ではなくて、まさに私たちの地域なり国を支える担い手として、しっかり位置付けて支えていくというのが法律の趣旨ですから。その趣旨に沿って、私は、「早々と"延長なし"と言うような段階ではない」と強く言っています。
<円滑化法廃止を見越した債権売却は許されない>
――来年3月末前後に、金融機関は不良債権を売却するといわれている。このままでは大変なことになる。もう1度延長というのは十分可能ですか。
原口 それはやらなければいけないと思います。ましてや、廃止を見越して債権を売り飛ばすなんてあってはならない。とくに、いくらで債権が譲渡されたか、とか、金融債務者が知る当然の権利が侵害されているわけで、もっと金融円滑化法を書き込むべきですし、社会的な金融の役割を果たしたところにはちゃんと格付けのなかに入れるべきだ。被災地支援では今、九州が中心になって小さな融資で自立と再生を支援することを、JR九州の石原進さんが、バングラデシュのムハマド・ユヌスさん、九州大学の岡田昌治先生といっしょになられて、マイクロクレジットを進めています。同じ10万円のお金でも、世界をまたにかけて誰かの人間の尊厳を奪いに行くお金と、そうやって金利は小さいけど地域を支えるお金ではまったく違う。そこのところに国民の皆さんが気づいてこられていると思う。(敬称略)
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