福島第一原発事故から1年半が経過しようとしている。日々、福島で汗を流して、文字通り命を賭して事故の後処理をなさっていらっしゃる方々もいる。その努力にもかかわらず、福島がかつての姿を取り戻す見通しは、いまだにたっていない。帰宅ができない方々、風評被害に苦しむ方々。見えない放射線におびえる方々。これはすべて原発事故のせいだ。こんな危険なものが、無条件で「安全」と信じられてきた日本はいかに平和だったか。夢を見ていた日本人の目を覚まさせるに、福島の事故は十分大きな目覚まし時計だったのではなかろうか。これだけの大音量目覚ましでも、まだ日本人が白昼夢を見続けるのならば日本の現実の将来は暗澹(あんたん)としたものとなるだろう。
そんななか、原発を存続させるか否かの議論が進められている。国家戦略室がまとめた「エネルギー・環境の選択肢」を示したうえでなされる討論型世論調査である。この結果を受けて、今月末をメドに将来のエネルギー戦略の大見出し「革新的エネルギー・環境戦略」が決定される予定だ(ただし、決定期日が延ばされる可能性あり)。全国を行脚し意見を吸い上げ続けてきた討論型世論調査は、22日、報告書の形で結果を公表するまでに至った。戦略室が示した選択肢は、原発依存0%、15%、20~25%の3つだ。これらパーセンテージをもとに2030年の日本の様子をシミュレートし、その結果を市民に提示、討論をさせた上でどのシナリオを支持するかを調査したものだ。
結果は、原発ゼロシナリオ支持が46.7%、15%シナリオ支持が15.4%、20~25%シナリオ支持が13.0%となった。国民の半数近くが、原発をゼロにした場合の負担増を知ってなお、原発ゼロを支持したことになる。これは政府、電力会社、経済団体の思惑に沿ったものではなかろう。けれども、国民の意思がNOを突き付けているのだ。見方によっては圧倒的多数とは言えないかもしれないが、それでもゼロシナリオがそれ以外を上回っていることの意味は大きい。
原発をゼロにする民意がはっきりしたとはいえ、原発をゼロにするためには多額の廃炉費用と太陽光などの再生可能エネルギーへの投資、節電など越えるべきハードルが多数ある。それをどうするのかも国家戦略のひとつとなるだろう。この結果を政府はどう扱うのか。お気に召す結果が出るまで調査を続けるか。それとも無視して原発を再稼働させるのか。今、国家の品格が問われている。
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