<田中正造の生き方に影響受け>
野田首相と、脱原発デモの主催団体「首都圏反原発連合」の代表らが22日、会談を行なったが、議論は平行線に終わり、環境省の周囲や首相官邸前で行なう、いわゆる"金曜デモ"は続いている。シュプレヒコールが響き渡るなか、一人の優しげな年配の男性が、淡々と経産省前テントで川柳を書いたボードを掲げている。川柳作家の乱鬼龍さんだ。「規制委員 こんなやつらで イインカイ」など、ユーモアをもって原発停止や規制委員会人事への異議を唱え続ける。
乱鬼龍さんは、日本最初の公害事件と言われる、足尾銅山鉱毒事件の起こった群馬県の出身。公害を起こした企業に対して、リーダーであった田中正造と被害を受けた農民たちの行なった反対運動は、後の公害と戦う被害者側の人たちのお手本ともなった。
倫理の道を実践した田中正造の生き方に感銘を受けた乱鬼龍さんは、若いころから、環境問題に興味を持ち、それに関わる活動を続けてきた。川柳を読むことで、ユーモアを交えて、現状をいい方向に変えていくための活動を行なっている。「群馬出身であることもあって、足尾銅山鉱毒事件に喚起されている部分は大きい。今回の東電の原発事故後の対応の悪さと、それに対する脱原発のデモは、思想的に右とか左とかは関係なく、企業の倫理問題だと思う。川柳を読むことで、力になれたらと思っている」と話す。
<ユーモアで体制批判>
川柳や狂歌などを使って政治や権力のあり方を批判するやり方は、室町、江戸の封建の時代から存在した。ユーモアを交えて時代を風刺し、笑いを生むことで、権力の横暴を批判する手法は、真っ向からの批判よりも場合によっては効果を発揮する時がある。「解決しなければならないのは、核燃料廃棄物の問題です。ゴミをどこに捨てるのだ?という話。住居にたとえるなら、トイレのないマンションに住んでいるようなものですよ」と、分かりやすいたとえで語った。今後も、霞が関の経産省テント前で、公害(原発事故)を起こした企業と、起こした後の企業のあり方を、川柳を通して批判していく。
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