9月1日、福岡市博多区の冷泉荘で映画『ミツバチの羽音と地球の回転』の上映会が行なわれ、会場にはほぼ満員となる観客が詰めかけた。上映会は、午後1時からと午後5時からの2回に分けて行なわれた。『ミツバチの羽音と地球の回転』は、中国電力が建設を計画している上関原子力発電所(山口県上関町)の建設をめぐり、反対運動を展開する地元住民の活動や生活の様子を追いかけたドキュメンタリー映画である。
この日は、福岡市内の別会場にて、チェルノブイリ原発事故による健康被害の実態に迫った映画『チェルノブイリ・ハート』の上映会と、原子力問題の最前線に立つ小出裕章氏による講演会が行なわれていた。そういう背景を考えると、この上映会の座席がほぼ埋まったことに対し、筆者は驚いた。
一般的に、フクシマから遠いほど、放射能汚染や原発に対する住民の意識は薄くなると言われているが、この現象は、九州にも積極的に原発に関する情報や知見を求める人々が増えていることを意味しているのではないか(無論、避難者も徐々に増えているだろうが)。
上映会を企画した升井はるみさんは、上映前の挨拶で「初めて『ミツバチの羽音と地球の回転』を鑑賞したのは、3.11の前でした。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を経験したいま、どうしてももう一度観たいと思って上映会を企画しました」と語った。3.11を経験したいま、人々のこの映画の捉え方は、大きく変わったはずで、それは、会場の空気感が十分伝えていた。
市民が、自ら社会問題を投げかける映画を上映し、人々がそれを鑑賞し、現場やSNSなどで感想をシェアする。このような活動が根付くことで、自立した市民が増加し、"第2のフクシマ"は防げるのではないだろうか。そういったことを筆者は取材活動のなかで感じている。
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