この夏、グランドオープンした「あるあるCity」。2007年１月にラフォーレ原宿小倉が閉店した後は、閑散としていた小倉駅北口（新幹線口）に活気が戻っている。アニメイト、まんだらけ、メロンブックスなどの専門店やゲーム、アニメグッズ、カードゲームの店舗がズラリと並ぶ。７階には吉本興業による「あるあるYY劇場」が入り、北九州で「笑い」に触れる機会を提供している。ここで公開収録するTVQの番組「あるあるYYテレビ」を深夜の帯枠で放映しており、サブカルチャーの発信基地を目指すあるあるCityのなかでも１つの基軸となっている。北九州市漫画ミュージアムの蔵書は５万冊におよび、くつろいで漫画を読めるフリースペースがあり、漫画ファンだけでなく、家族連れでも楽しめる。

＜再開発の思惑とタイミングが合致＞
　サブカルチャーの一大拠点が小倉新幹線口に生まれるのには、運も味方した。北九州市は、「銀河鉄道999」の作者・松本零士氏や「キャッツアイ」の作者・北条司氏の出身地というだけでなく、アニメソングのコンサート「アニうたKITAKYUSHU」を09年から主催しており、もともとサブカルチャーを地域の盛り上がりに活用してきた。

　一方の（株）アパマンショップホールディングス（以下、ASHD）のグループ企業である（株）アパマンショップネットワーク（以下、ASN）は、部屋探しのキャンペーンに漫画「ONE PIECE（ワンピース）」やアイドルのAKB48を起用したりしていた。

　小倉駅北口の再開発の話が持ち上がったとき、北九州市は、「漫画ミュージアム」をつくろうと模索。北九州市の「（仮称）北九州市漫画ミュージアム基本コンセプト検討委員会」が立ち上がり、第一回検討会を開いたのが2007年８月。ASHDは、M＆Aを通じて、小倉北口に「小倉興産21号館」のビルを持っていた。再開発の思惑とタイミングが合致し、10年２月に北九州市漫画ミュージアムの入居が内定。この内定を機に、ASNは、それまで蓄積してきた本業のノウハウを活かし、「漫画ファンの聖地」として、ビルのコンセプトを統一させて、「小倉興産21号館」の再生を図り、テナント誘致にまい進。アニメ、漫画、カードゲーム、コスプレなど、幅広いサブカルチャー関連の店舗が集う"サブカルの聖地"を登場させた。

　あるあるCityの運営を担当するASNの川森敬史社長は、「北九州市と町ぐるみで、一緒にやれたことは大きい。縁があって、タイミングもマッチした。ビルのコンセプトを固めていくなかで、吉本興業も入ってくれた。本業でこれまでお付き合いのあった企業に声をかけ、このコンセプトに賛同して関心のある企業に入ってもらった。幅広い年代の方に喜んでもらえるコンテンツがそろっていると思う」と、自負する。
　アニメや漫画だけでなく、"笑い"のノウハウを持っている吉本興業の「あるあるYY劇場」が入ったことも、集客に効果を発揮しそうだ。AKB48グループで博多に拠点を置くアイドルHKT48、大阪拠点で吉本興業所属のNMB48が定期的に訪れ、コアなアイドルファンも獲得している。アニメ専門チャンネルの「アニマックス」が手がけるアニマックスミュージックカフェには、秋葉原にあるAKBカフェのように、カフェの店員にファンが付いたりしているという。アニメや漫画だけではなく、サブカル関連の数本の基軸を持っているのが長所と言えるだろう。

＜周辺商店にも波及効果＞
　あるあるCityは、経産省が募集した11年度の「戦略的中心市街地商業等活性化支援事業費補助金」に応募し、まちづくり推進対策費補助金を受けている。その補助金に見合うだけの市街地活性化の効果はあるのか――。

　あるあるCityには、福岡市、大分県、山口県など近隣から幅広い年齢層の客が足を伸ばしており、１万人規模の集客力がある。鉄道などによる人の移動、北口周辺の商店、駐車場、飲食店の売上などへの波及効果に加え、これまでは、小倉に来なかった客層が小倉北口に集うようになったことを考えると、滑り出しは上々だと言えそうだ。

　川森社長は「東京にあるサブカルの商業施設にも劣らないものだと思う。来てもらった客に喜んでもらい、テナントにも利益を上げてもらえれば、市街地活性化という意義にかなうことになる」と、小倉駅周辺活性化への効果を強調する。

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