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ソフトバンク孫社長、スプリント買収の大博打(後)~ボーダフォンの二匹目のドジョウにならない
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2012年10月16日 07:00

<スプリントは大赤字会社だ>
 1つは、ボーダフォン日本法人は優良会社だったが、スプリントはボロ会社だということである。米ニュース専門局CNN日本法人は10月12日、ニューヨーク発として「ソフトバンク、米スプリントを救済か」と報じた。ソフトバンクをスプリント救済に現れたサンタクロースという見立ては、最も的を射ていたように思う。スプリントは、とびきりの"負け組"だったからだ。

 米携帯電話業界は、ベライゾン・ワイヤレス(契約数1億865万件=11年末時点)とAT&Tモビリティ(同1億324万件)の2強が"勝ち組"だ。AT&Tは01年にNTTドコモが1兆1,000億円を出資したことで有名。だが、M&Aはものの見事に失敗。ドコモは04年にAT&Tの全株式を売却して、1兆円が文字通り泡と消えてしまった。
 スプリント・ネクステル(同5,502万件)は3位とはいえ、シェアは2割にも満たない。スプリントは1899年に創業。長距離通信で発展し、05年ネクステルを買収し、現社名となり携帯電話事業を始めた。
 スプリントの決算書を見て驚いた。存在していることが不思議に思えるほどのボロ会社なのだ。11年12月期の連結業績は売上高が336億ドル(約2兆6,000億円=1ドル78円で換算)、最終赤字が28億ドル(約2,200億円)と5期連続の赤字。有利子負債は202億ドル(約1兆5,000億円)にのぼる。買収すれば、この負債を抱え込むことになる。

 ソフトバンクの6月末時点の有利子負債は1兆5,582億円。イー・アクセスは株式公開方式で買収するので資金負担はないが、イー・アクセスの有利子負債2,251億円(6月末時点)を引き取らなければならない。
 スプリントなど2社の買収には、みずほコーポーレート銀行など3メガバンクが中心になり融資団を形成。融資総額は1兆5,000億円規模になると報じられている。スプリント買収には、買収資金と有利子負債の肩代わり分を合わせて3兆円の負担が増える。ソフトバンク本体、イー・アクセス分と合算すると4兆7,000億円に膨れる計算だ。メトロ買収も加われば、有利子負債の負担はゆうに5兆円を超えるだろう。

<神風は吹かない>
 2つは、米アップルのiPhoneが、スプリントに奇跡をもたらさないということである。ソフトバンクはボーダフォン日本法人を債務の引き受け分と合わせて2兆円で買収した。この買収が成功した最大の要因は、アップルのスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ) iPhoneにある。

son-masayoshi.jpg ソフトバンクがiPhoneを発売したのは08年7月。09年に入り快進撃が始まる。新規契約から解約数を差し引いた純増数では首位を独走。iPhone人気で、ソフトバンクは1人勝ちした。巨額な買収資金の返済が順調に進んだのである。
 米国ではアップルのiPhoneは、長らく上位2社が独占し、スプリントが取り扱いを開始したのは昨年10月からだ。すでにiPhoneは行き渡っており、当初の爆発的な人気は望むべくもない。ソフトバンクにはiPhoneの神風が吹いたが、スプリントには神風が吹かない。

 スプリントを買収しても、有利子負債を返済していくのは至難の技だ。それどころか、2強に押されて赤字経営から脱け出せず、追加支援の公算が高い。スプリントは、ボーダフォン日本法人の二匹目のドジョウにならないということである。
 それでも、「日本のドンキホーテ」(米ウォール・ストリートジャーナル)と名付けられた孫正義社長にエールを送りたい。気宇壮大な話が大好きで、"暴走機関車"との批判をものともせず、リスクに果敢に挑む力強さこそが、孫正義氏の真骨頂であるからだ。

(了)

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