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「竹島」「従軍慰安婦」をめぐる断章(1)~今、必見の映画「あれが港の灯だ」
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2012年10月16日 12:05

 最近、所属する大学(大分県立芸術文化短大)の授業「日韓コミュニケーション論」で、李承晩ラインの悲劇を描いた日本映画の名作「あれが港の灯だ」(今井正監督、1961)を学生たちと一緒に見た。李承晩ラインをめぐって日本側漁民に死者が出ていたことを、受講生は誰も知らない。いや、「李承晩ライン」という言葉すら知らない。

 上映時間100分程度。2回に分けて見た。学生たちは意外と(笑)、熱心に見てくれた。題名は陳腐だが、内容は悪くない。僕がこの映画を初めて見たのは、3年前のことだ。日本共産党員だった今井正は、戦時中に「愛と誓ひ」(1945)という特攻隊映画をつくった。そのフィルモグラフィーを調べていて、この作品に遭遇したのだ。
 1960年前後、李承晩ライン問題で、日本漁船が韓国に拿捕されていた時代を描いた作品である。日韓のはざまで苦悩する在日韓国人の漁船員(江原真二郎)が主人公。李ラインを問題を扱った映画を、ほかには知らない。

 李明博大統領の「竹島上陸」以降、日本でも竹島領有問題が大きくクローズアップされてきたが、李ライン問題は現在、双方ともにあまり言及しないテーマだ。
 基礎知識を押さえておこう。以下は、ウィキペディアからの引用。


 「1952年(昭和27年)1月18日、大韓民国(韓国)大統領・李承晩の海洋主権宣言に基づき韓国側が一方的に設定した軍事境界線。韓国では「平和線」と宣言された。海洋資源の保護のため、韓国付近の公海での漁業を韓国籍以外の漁船で行うことを禁止したものであるが、本当の狙いは韓国で獨島(日本の漢字では「独島」)と呼ばれている竹島と対馬の領有を主張するためであるとする説もある」
 「これに違反したとされた漁船(主として日本国籍)は韓国側による臨検・拿捕の対象となり、銃撃され殺害される事件が起こった(第一大邦丸事件など)。国際法上の慣例を無視した措置として日米側は強く抗議したが、このラインの廃止は1965年(昭和40年)の日韓漁業協定の成立まで待たなくてはならなかった。協定が成立するまでの13年間に、韓国による日本人抑留者は3,929人、拿捕された船舶数は328隻、死傷者は44人を数えた」
 「李承晩ラインの問題を解決するにあたり、日本政府は韓国政府の要求に応じて、日本人抑留者の返還と引き換えに、常習的犯罪者あるいは重大犯罪者として収監されていた在日韓国・朝鮮人472人を収容所より放免して在留特別許可を与えた」


 これがダイジェストだ。映画「あれが港の灯だ」のなかで、韓国側の狙撃で死者が出るシーンがある。「第一大邦丸」事件を念頭に置いている。映画の終末部分。韓国側の拿捕を逃れようと、日本人船員が続々と海に飛び込む。それを救助する日本の巡視船が「公海上での拿捕行為は国際法違反です」と、韓国側に警告するシーンもある。主人公の在日コリアンは、日本側からは「スパイ」呼ばわりされ、韓国側からは「パンチョッパリ(半日本人)」と罵られる。同民族の娼婦(岸田今日子が好演)からも、「どこの生まれ?南?」と見破られる。水木洋子の脚本は、なかなかよくできている。
 太っ腹な漁労長役の山村聡など、演技陣もしっかりしている。音楽・撮影ともに迫力がある。もっと評価されていい作品だ。何よりも時代のリアリティが感じられる。脚本、監督の主眼は「在日の辛さ」にある。たしかに、その通りだ。しかし、それ以上に、日本人が「忘れてしまった過去」をクローズアップさせる点を評価したい。

(つづく)

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<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授を歴任。07年4月から大分県立芸術文化短期大学教授(マスメディア論、現代韓国論)。


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