「何もわかっていなかった」と猛省するのは今春オープンした青果店・八百勝の代表戸高勝氏。地場有数の名門スーパーで青果物を担当してきた。業界内で知らぬ人はいない実力者。

　大手の企画力と小規模店の柔軟性を融合した店創りを模索して独立した。ところが、カットフルーツなどスーパーでよく売れた商品が売れずノウハウが全く通用しなかった。販売力のある青果店を訪れて痛感したのが「自分は八百屋の１年生。青果物担当のプロだったかも知れないが、八百屋は素人」。青果店の教え通り熊本・植木町のすいかをまるごと販売してみると飛ぶように売れた。「スーパーと八百屋では求めているものは違う」と確信する。そこから消費者のニーズにアンテナを張った。

　とはいえスタッフは妻をはじめとした素人ばかり。「八百屋なら知ってて当然の商品を知らないこともある。」かと言って知識のないものを提供する訳にはいかない。戸高夫人は「とりあえず空けて食べてみよう」とさっさと開封して試食してしまうそうだ。さらに、「こともあろうに、『これあんまりおいしくないね』などと言ってしまう」。見事な素人ぶりだが「裏返せばプロの消費者ということ。お客様を裏切って売ることはない」と絶大な信頼を寄せる。

　あぶなっかしい店創りがファンを呼び、心配して商品提供までしてくれるという。こんぺいとう店に勤務する顧客から「これを売ってみなさい」と提案された。八百屋でこんぺいとうはどうかと思ったが何と常に品薄状態。」またポテトサラダに似たかぼちゃサラダも顧客の要望で販売を始めた。「はじめはそのお客様のために製造していたが、今ではポテトサラダに並ぶ人気商品に育った。」

　こうした活気に飲食店もほっておかなかった。多店舗展開するオーナーが来店しバッグヤードを見て作業場の広さに着目、納品が決まった。近隣の他飲食店とも交渉中だ。トラックを持たず配送まではできないが近隣店舗・センターであれば更なる仕分け・納品も可能だという。「頑張れという励ましや、試食への感心の声などが本当に力になる」。八百屋の素人集団が不思議な魅力を持つ店舗を創りつつある。

■八百勝
代　表：戸高　勝
所在地：福岡市博多区博多駅南6-6-20
営業時間：午前９時～午後７時
店休日：水曜日
ＴＥＬ：092-483-5224
ＦＡＸ：092409-9929

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