<道州制は不可能>
地方分権を求め、各地の改革派首長がついに国政へ進出しようとしている昨今、樋渡市長はそうした動きを武雄市からどのように見ているのだろうか。地方分権、地域主権とともに掲げられている「道州制」について、樋渡市長は「できないと思います」とバッサリ。
かつての総務省官僚、そして今、地方自治体の首長として行政の実務に携わっている立場からすれば、全国レベルで道州の庁を作ることに途方もない費用と時間がかかることは容易に想像がつくといったところだろう。
まるで「魔法の薬」かのように、政治家があらゆる政治課題の解決策を問われて「道州制」を繰り返す場面が見受けられる。しかしながら、その実現に至るプロセスがきちんと描けているかと言えば甚だ疑問だ。また、現状、その「魔法の薬」について国民レベルで理解が進んでいるとは思えない。民意と離れ、理解の得られない制度改革が実行されれば大きな混乱を招く恐れがある。
樋渡市長は「一番いいのは県の廃止。『日本国福岡市』『日本国武雄市』になることです。今でも広域行政は行なわれていますし、それでいい。新たに『九州府』なんて作ると、役人の天下り先になるだけです。国と基礎自治体の二層構造で十分です」という。外交・安全保障は、国、教育を含めた住民生活に身近なところで基礎自治体という役割分担ができれば、多重行政・多元行政のムダがなくなる。
人口5万~10万の基礎自治体のうえに国があるという仕組みは、江戸時代の幕藩体制に近い。また、樋渡市長が参議院の代替として提言する、首長が議員を兼務する「地方院」は、江戸幕府の重職に自藩の統治で成果をあげた藩主が就く仕組みを惹起させる。言うなれば「廃県置藩」の考え方は、日本の各地に中央政府を作る考え方とは一線を画す。
「400ぐらいのやりたいことのイメージが頭のなかにあります。一気にやるのは無理なので、時代が合ってきたら、それぞれをやるということですね」という樋渡市長。今後、武雄市というロールモデルが、日本全国へどのような革命的提案をしていくのか、注目していきたい。
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