<九州の小水力発電にも可能性>
九州にも小規模の水力発電を設置して採算の取れる可能性のある場所は埋もれている。大分県日田市(旧中津江村)の鯛生小水力発電所では、すでにあった砂防ダムを利用して、小水力発電所を建設。発電した電力を鯛生金山や観光施設などで利用している。
開発、建設費用のコストダウンの必要性から既設の施設をうまく利用しなければならないなど課題はあるが、潜在的な水力発電能力は、まだ他にもありそうだ。水環境開発の窪田社長は「大分など九州には水力発電に向いているところがたくさんあると思います。今あるダムをうまく使えば、もっとエネルギー調達が可能なのでは。水力は24時間、運転できるところが利点」と、九州にも地の利はあると分析する。鹿児島県では、用水路など約40カ所に小規模水力発電を設置する案が進められている。設置が進めば、約5万世帯の電力をまかなえる見込み。
国交省では、小水力発電の導入を促進するために、農業用水路に発電所を作る場合、許可を不要にし、事務手続きを簡略化する法案を来春の国会に提出する方向で動いている。クリーンなエネルギーを地域の森林、山、農業用水などの地域の資源で作り、地域で使うという小規模、地域密着型の発電として期待される。
<コスト回収などに課題>
とはいえ、採算を合わせるのには、課題も多い。再生可能エネルギー全量買取制度による売電や補助金で回収しやすくはなっているものの、発電機械の設置費、土木の費用を含めた建設費、維持管理費などを回収するのには、10年~20年程度の期間を要する。
河川の流れを利用するための水利権を取る必要があるなど、設置にこぎつけるまでの手続きにも時間と手間がかかる。農業用を利用する場合、かんがい期以外は水量が少ないため、発電量が少なくなる、ダムを利用する場合でも流量の安定性確保が難しいなど、課題はある。
それでも、風力、太陽光に比べると、エネルギー変換効率が高く、天候に左右されない水力発電のメリットは少なくない。活用されずに埋もれているエネルギー。放っておくには、もったいない。
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