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交渉力とは何か(4)~近江商人と総合商社
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2012年11月 5日 07:00

<「三方よし」が信頼勝ち得た>
 田村教授が、最高のネゴシエーターだと、その名前を挙げたのは鎌倉時代~江戸時代に近江国(現在の滋賀県)から発祥し、全国的に活躍した「近江商人」だ。
 「近江商人の『三方よし』を念頭に置いておけば、いい交渉ができるはず」。近江商人の三方よしとは、自分よし、相手よし、世間よし。自分、相手、世間の三方向がよいと思えば、誰も文句を言わない。どこからも歓迎される。

 近江商人の活躍した江戸時代には、藩があり、藩の境ごとに今でいう国境が存在していた。近江商人は、その藩の境を自由に行き来して商売することを許されていた。
 「なぜかと言うと、『こいつらは、自分たちの利益のためだけには、来ない』という信頼を勝ち得たから。三方よしの順番としては、世間よし→相手よしがあって、最後に自分よしの順だと思っている。Giveすれば、最後には自分のところに返ってくるという精神を彼らは持っていた」。

<薄利多売の本当の意味>
_sora.jpg 現在、薄利多売と言うと、安いものを薄い利益でたくさん売って儲けるという意味で使われることが多いが、この薄利多売は、近江商人のスタイルから発祥したものと言われている。薄利多売の本当の意味は、高く売れそうな時でも、自分の利益のためだけにふっかけないで薄利で売るという近江商人のやり方から来ている。「大きな利益を乗せないで薄利で売り、信頼を勝ち取れば、最後はみんなが買ってくれるから多売になる。相手のことを考えて商売をしろということ。ビジネスなどすべての交渉ごとにおいても一緒です」と田村教授は語る。

 近江商人の精神を引き継いだのが、日本の総合商社。鉛筆からプラントまで、総合的に商品を扱ういわゆる総合商社が複数存在するのは、日本だけ。日本独特の事業形態が発展し、今も隆盛であるのは、近江商人が大事にした、信頼に基づくビジネスを展開しているからだと、田村教授は言う。「間に入って、利益を抜くだけなら、商社はいらない。彼らは、いわば『保険』。国際化していく過程で、信用に基づく事業を展開して成長した。信用、信頼が、交渉のポイント」。

 ただ、誠意を貫けばいいというのは、日本の美徳ではあるが、欧米、アジア各国とビジネスで対峙する時は、それだけではうまくいかない時があるということも知っておかなければならない。

(つづく)
【岩下 昌弘】

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<プロフィール>
tamura_kyozyu_pr.jpg田村 次朗(たむら じろう)
慶応義塾大学法学部教授。専攻は、経済法、国際経済法と交渉学。ハーバード・ロー・スクール修士課程在籍時に、交渉学を学ぶ。ジョージタウン大学客員教授などを経て、97年より、現職。ハーバード大学交渉学研究所では、インターナショナル・アカデミック・アドバイザー、ダボス会議(世界経済フォーラム)では「交渉と紛争解決」委員会の委員を務める。交渉学に関する著書に「交渉の戦略」(04年、ダイヤモンド社)など。


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