<ネットに出遅れたヤマダ>
2012年、ネット化は一大潮流となってきた。リクルートホールディングスは来年3月、衣料、家電などの小売店が出店するショッピングモール型のネット商店街の運営に乗り出す。ネットの巨人、米アマゾンジャパンに楽天、ヤフー、リクルートのネット商店街が挑む展開だ。既に米国ではネット通販の広がりで家電量販大手ベスト・バイが業績不振に陥った。日本でもネット通販市場は拡大の一途にあり、早晩、家電量販店は飲み込まれるという危機感が深い。
ヤマダは10年11月、モール型通販サイト、ヤマダモールを開設。主力の家電のほか、家具や衣料品、食品など計120万品目をそろえた。店舗のカード会員の顧客基盤を生かせば、楽天などからシェアを奪えると踏んだ。だが、読みは甘かった。モールへ出店する企業の数も増えなかった。
そこでヤマダは今年6月、通販サイトや仮想モールなど、ネット関連サービスを統合してヤマダ電機マルチSNSを開始。現在は300億円の通販を含むネット関連事業売上高を年間で1,000億円まで引き上げるのが狙いだ。
<狙いはベストが出資するストリーム>
ヤマダがネットを強化するターゲットにしたのがベストだった。ベストがネット通販に本腰を入れたのは05年8月。パソコン、家電販売の通販サイト、ECカレントを運営する独立系ネット通販会社、ストリーム(東京都港区、劉海涛(りゅう・かいとう)社長)と資本・業務提携を結び、ストリーム株式を14億円で取得した。ネット通販に商品を供給することで、売上の拡大を狙ったのだ。ストリームは07年2月、東証マザーズに新規上場。ベストは現在、29.3%の株式を保有している。
ストリームの13年1月期の売上高は前年同期比27.9%減の245億円、最終利益は6.5億円の赤字の見込み。家電量販店と同様、家電エコポイントの終了や地上デジタル放送化に伴う駆け込み需要の反動から、パソコン、薄型テレビが落ち込んだことが要因。そのため、伸びが好調なLED照明や、ミラーレスタイプの一眼レフカメラの扱いへと転換中だ。
ネット通販事業が拡大するのは確実。上海ストリームを設立して、中国の通販市場に参入しているのも魅力だ。ベストの関連会社、ネット通販のストリームを取り込めば、ネット通販の売上拡大につながる。これが、ヤマダがベストを買収した本当の狙いだろう。
家電量販店の生き残り策は、ネット対応力にかかってきた。家電量販店の再編はこれからも続く。再編のキーワードは「ネット通販」。次なる再編の対象は、上新電機(大阪市、売上高4,101億円)とノジマ(横浜市、同2,110億円)。両社ともネット通販で先行している。
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