<民意はどこに!?>
師走の総選挙は、民意とは完全には一致しない結果になった。圧勝したと言われる自民党。しかし、得票率では、前回の09年総選挙時の得票率とさほど変わっておらず、小選挙区で約4ポイント、比例で約1ポイント伸びたにすぎない。
今回、小選挙区で自民党に投じられた票は、約43%。これに対し、議席は、300議席中の237議席と全体の約79%の議席を獲得した。比例代表では、自民党の得票率は約27%で、大敗した前回とほぼ同じ(今回の比例代表での議席数は57議席、09年は55議席)。
294議席の結果だけを見れば、確かに圧勝だった。しかし、民意の風が、自民党に吹いたわけではなかった。
前回、民主党に投じられた票が、日本維新の会に流れ、みんなの党、日本未来の党などの政党も票を奪い合った。無党派層の票が割れ、支持基盤の票を着実に稼いだ自民党が、頭一つ抜け出る形の選挙戦になった。
2大政党化したときの総選挙、小選挙区制では、どちらかにわずかな風が吹いた場合、大きくどちらかの政党の圧勝になってしまうことがある。小選挙区制の持つ問題点が、顕著に出た。選挙のシステムを利して、自民党が大勝した。
「脱原発を実現してほしい」という民意は確実に存在したはずだが、脱原発、卒原発を掲げた政党は軒並み敗れてしまった。
「脱原発」における注目の選挙区となった東京8区を例に取ってみる。「脱原発」の政策をメインに掲げた無所属の山本太郎氏が、自民党・石原伸晃氏に挑戦した。この東京8区では、石原氏が5期連続で当選中と自民党が強固な地盤を持っている。結果は、石原氏の13万2,521票に対し、無所属の山本氏が、7万1,028票(得票率は25・15%)にまで迫った。石原氏の完勝ではあったが、少なく見積もっても25%の有権者は、「脱原発を成し遂げてほしい」と思って票を投じたと考えてもいいだろう。
「原発ゼロ」は、選挙では敗戦した。大衆の声を実現するのが政治なら、埋もれてしまった民意を拾い上げる存在も、必要になってくるのではないか。
※記事へのご意見はこちら