<遠ざかった原発ゼロへの道>
「脱原発」「卒原発」を掲げた政党が敗れたことで、原発ゼロ、再生可能エネルギーへのシフトの道は遠ざかった。自民党は、緩やかに「原発維持、原発再稼働を容認する」と見られている。12月26日に発足した自公連立政権の出したエネルギー政策では、"安全"を条件に、事実上、再稼働容認に舵を切った。脱原発、卒原発への流れ自体がなかったかのような逆戻りだ。福島第一原発事故もなかったかのように"安全"を条件にできるのだろうか。
クリーンなエネルギーによる地方再生を目指した日本未来の党は敗れたが、「卒原発」に関して、引き続き「原発ゼロ」を掲げていた政党の政治家らが、埋もれてしまった民意をくみ上げ、政治に反映させる存在になるべきだろう。294議席を獲得し、勢いのある自民党からは、逆風をもろに受けることになる。原発維持の自民党に、原発政策では具体性を欠く民主党、原発に関してはあいまいな日本維新の党。原発ゼロを真剣に目指す政党にとっては試練の時を迎える。
日本未来の党の前衆議院議員の秘書を務めていた男性は、自民党の圧勝に関して、次のように吐露した。「野田総理が、突如解散を宣言して、第3極をつぶすという部分だけは成功した。自民党が勝利して、財界は諸手を上げて喜んでいる。原発は動かすことになるでしょうね。すぐにでも原発を再稼働させかねない。多くの議席を獲得して、その後押しがあるので、歯止めが利かずに、すべての原発を動かすなどと言い出してしまうのは危険だと思います」。3・11以前に逆戻りを始めたエネルギー政策に関して危機感を募らせる。
安倍政権が誕生し、その金融緩和政策によって、円安になり株価が上がるのはいいことだが、経済だけに重きを置き、財界とのしがらみを断ち切れずに3年3カ月前に戻ってしまうのか。エネルギー政策において、「原発ゼロ実現からのクリーンエネルギーを推進してほしい」という民意が置き去りにされるのは、たしかに危うい。
風当たりが強くなるが、それに臆せず、誰かが、埋もれた民意を背負い、「脱原発」の声を上げていかなければならない。脱原発を掲げていた政党、政治家たちのやり抜く気概が試される。
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