2月27日(水)、農林水産省主催の「日本食文化 無形文化遺産化シンポジウム~伝えよう!地域の食文化~」が開催された。会場となった池袋サンシャインシティ文化会館、特別ホールが満席となる約200人が参集した。これは農水省が日本食文化のユネスコ無形文化遺産登録実現に向け、国民的な機運の醸成を図るとともに、地域の食文化を継承していくため、全国9ブロック(関東、東海、中国・四国、九州、沖縄、北海道、北陸、東北、近畿)にわけて、2012年9月から実施してきた同シンポジウムの関東ブロック版(最終回)に当たる。
歴史学者の原田信男(国士舘大学21世紀アジア学部教授)が「地域と食―日本の食文化」について基調講演し、日本の食文化と密接に関わっている風土について、気候や地形などの自然条件だけで解釈するのは誤りで、そこに、時間軸という歴史的要因を加えないといけないと述べた。
原田氏がコーディネーターとなり、「伝えよう!地域文化」というテーマで、活発なパネルディスカッションが展開された。パネリストは、伏木亨氏(京都大学農学研究科教授、NPO法人日本料理アカデミー理事)、手島麻記子氏(彩食絢美流ダイニングデザイン代表取締役、日本酒スタイリスト)、浜田峰子氏(フードニスタ)、吉田めぐみ氏(野菜ソムリエ)、農林水産省の皆川芳嗣次官の5名。
皆川次官が、ユネスコ無形文化遺産登録申請の経緯、進捗について説明し、「和食」とは何かについて3つの明快な定義を紹介。1つ目は、多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重、2つ目は、栄養バランスに優れた健康的な生活、3つ目は自然の美しさや季節の移ろいの表現。
日本は2012年3月に日本食文化の無形文化遺産登録の提案を行ないその可否が早ければ本年12月に決定される予定。
日本には多様で、豊富な旬な食材や食品、栄養バランスの取れた食事構成、食事と年中行事・人生儀礼との密接な結びつきなどといった特徴を持つ素晴らしい食文化があり、諸外国から高い評価を受けている。世界では自国の食に関する分野をユネスコの無形文化遺産として登録する動きがあり、フランス美食術、地中海料理、メキシコ、トルコの伝統料理が社会的慣習としてすでに登録されている。
20歳以上の男女3,000人を対象としたアンケートで、98.4%の人が日本の食文化を伝えていくことを重要と考え、91.8%の人がユネスコ申請を支持したという調査結果がある。
日本食文化の無形文化遺産登録に向けた取り組みをきっかけに、日本人一人ひとりが、自身の食生活や伝統的な食文化について再考し、目覚めるのはとてもいいことだ。さらに、日本人の根幹を成す素晴らしい日本食文化、とりわけ、地域に伝わる食文化を子供たちに引き継いでいくことの重要性も認識したい。
※記事へのご意見はこちら