<楽しむこと、そして時間を大切にすること>
――SEをされていたそうですが、その経験が今、役立っているのではないですか。
荒木 そうですね、仕組みづくりというより、時間管理の面で影響を受けました。当時、勤めていた先が、いかに経費を削減するかを常に考えたシステム開発の会社だったので、自分もいかにして少人数で効率的に売上を挙げるか、ゲーム感覚で常に考えるようになりました。だから今も、毎日何か効率よく仕事ができるようになるのではないかと、常にシステムをカスタマイズしています。社内の状況や今の自由に合わせてどんどんと変えていっています。昔はアルバイトを含め10名のスタッフがいましたが、今は自分を含めて3名です。時間がかかる作業を常にスタッフ同士で確認し合い、改善していった結果です。こうして得た時間は、ほかの面での会社の運営の効率化や自己啓発に活かしてもらっています。
――ビジネスのなかで、仕組みづくりは、一番大変で時間がかかる領域だと思いますよ。皆が面倒だと思う領域に踏み込まれていますね。
荒木 自分は面倒を苦にしないタイプですから。最近は、この難関を乗り切れば次が開ける、と考え、生みの苦しみとして楽しむようになってきています。インターネットというフィールドには、地道に工夫すればするだけ徐々に右上がりになっていく手ごたえがあります。人間が1人でやれることには限界があります。でも、システムを使えば1人当たりができることが10倍にも20倍にも増えていきます。自分がつくったもので1人当たりの生産能力を上げることができる、いわば1人が1つの工場を持っている状況です。そのアウトプットをどんどん大きくしてあげることで、より少人数で対応できるようになる、そういう仕組みをつくることばかり考えています。事務所を訪れる方は、スタッフ数の少なさに驚いています。
――何かにこだわる、いわゆるマニア気質も、経営者に必要なことですね。
荒木 仕組みをいじっていないと、逆に不安になるでしょうね。あまり先のことを考えないタイプなので、絶対に良いことだと思えば、とりあえずつくってみないと気が済まないのです。基本となるアプリケーションがないので、日々どこかいじっています。社内も忙しいので、彼らの大変な姿を見るともっと楽にしてあげたいと思いますし。3人しかいないともう家族みたいで。今度、あのシステムが導入になればもっと楽になるから、などと言うと、皆のモチベーションも上がります。
――楽しそうに仕事をされていますね。
荒木 苦労はたくさんありますが、それは楽しみに変えた方がいいですよね。周りの人たちも「楽しんでクリアすればいいよね」と考えている方が多いです。今までこの考え方でやってきて結果が悪くなったことはないので、「これでいいんだ」と信じていますよ。もし悪い結果が出たら、それはそれで何らかの武器になるでしょう。とりあえずやってみてから考えています。
――自分の運を信じている人は強いですね。そういう人の方が、失敗してもモチベーションの回復が早いようです。
荒木 性格上、落ち込まないというのもたしかです。心が常に元気であるように心がけています。時間は同じように流れているので、悩んでもしょうがありません。悩んだら、ジムに行って身体をつくると、心もリフレッシュしますよ。体つきが変わると気持ちも変わって、自信も生まれるんです。仕事柄、オフィスに閉じこもりがちですが、運動するようになって、心身ともに生き生きし始めました。そんな自分の変化を見てジム通いを始めた経営者もいるぐらいです。
――最近では、楽しんで仕事をすることや運動をすることが、運気を高めるということが脳科学的にも証明されている、という本もよく見かけるようになりましたね。何より楽しそうにしていると、人が集まってくる。
荒木 そして人と人とのつながりも大切ですよね、私も人に助けられています。友人や先輩がポイントごとにそれぞれ良いアドバイスをしてくださいました。話すことで心が楽になることもありますから。1人では仕事はできないと、仕事をすればするほど痛感します。だから周りは大切にしなくてはならないし、大事にしなくてはいけない、不義理はできないと思います。
――苦労が転機になった経験などありますか。
荒木 トラブルにも学ぶところがありますから、そこを客観的に見つめ、きちんと受け止めれば転機にできると思ったことがあります。人の大切さも、このときに学びました。そして時間の大切さも学び、1日1日を大切に感じるようになりました。時間を千切りにして動けば、1日をより濃く充実したものにできるのではないかと思います。システムに手を入れない日がないというのも、この瞬間できることを積み重ねていけば、1週間でできる限り、より良い環境に変わっていくだろうと信じているからです。こうしてみるとたしかに、苦労した経験が転機となって、自分の力になっていますね。
ときには冷や汗をかく瞬間もありますよ。でも一度そういう体験をすると、次に同じ状況になっても大丈夫だと思えます。先輩に頼れるようになったのも、同じ体験をした人が多いので、いろいろ教えていただけますし、行動するアイディアもいただけます。決断力が早くなりますね。
――仕組みづくりに取り組む姿勢にも、大いに影響を与えているようですね。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:荒木 祥平
所在地:福岡市早良区百道浜1-3-70
設 立:2005年9月
資本金:300万円
売上高:(12/8)約7億円
<プロフィール>
荒木 祥平(あらき・しょうへい)
1977年生まれ。SEとしてIT企業に2年間勤務した後、27歳でテンペストパワーを起業した。2005年に株式会社に。これからは海外展開にも力を入れていく。
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