長崎県内最大級の農水産物直売所「長崎漁港がんばランド」(長崎市)が、県の指導を受けて、一般食品と生活用品の撤去に追い込まれている。店舗中央の陳列棚6列半に商品を並べることができず、カラッポになっている。長崎県が一般食品と生活用品の売り場面積の割合や販売品目を問題にして、行政指導したからだ。県によれば、「漁港関連施設だから、スーパーは認められない」というのである。
がんばランドは、県漁港管理条例に基づいて、新長崎漁港の「漁港関連施設用地」を県から占用許可を得て借りて施設を設置している。指導に従わなければ、占用許可を出さないという脅しだ。今年3月のリニューアルオープン以降、許可は1年更新ではなく、1カ月更新とされている。
がんばランドは、地元漁協、水産団体、水産卸売会社などでつくる「長崎漁師村運営協議会」が運営している。新店舗(2期事業)は、好評だった1期事業(旧直売所、寿し店、和食バイキング)を受けて、旧直売所の隣に移転新設した。売り場面積は約1,700m2。鮮魚店6店舗、水産物・水産加工品、農産物の直売コーナーがあるほか、今年4月までは一般食品や生活用品も販売されていた。
<県は一般食品・生活用品も30%まで認めていた>
水産物・農産物以外の売り場が計画されていることは、2期工事の企画段階から県は百も承知だった。それどころか、新規雇用約150人、新たな水産取引約60億円が見込まれ、「長崎の漁業の振興、地域の活性、それと雇用につながる部分については、大きく推進していかなければならない」と述べていた。
県水産部漁港漁場課が2012年3月作成した文書には「県内の大手スーパー(株)エレナが運営協議会の一員として『がんばランド』の運営に参画し、一部水産物・農産物以外の売場が計画されているが(中略)、やむを得ないと判断」と書かれている。また、一般食品・生活用品エリアを全エリアの30%未満まで認めている。スーパーの参画により、長崎漁港から水揚げされる魚介類の新たな流通ルートの実現や販売ノウハウの伝授などの効果が期待できるからだと説明されている。
県議会では、県はこう答えている。
「一般の方が見たときに、ここは水産物中心の直売所、漁業体験施設、福利厚生施設、そういったものと理解をいただくような感じにしていただければと思っております」(野口水産部長、2012年2月定例会農水経済委員会)。
「一般生活物資等々も販売されるでしょうから、それについては水産関係団体が入って販売するということについては、これは当然やむを得ないだろうということでの占用許可を与えております」(下山水産部政策監、2012年7月定例会農水経済委員会)。
つまり、福利厚生施設という性格に位置づけることで、一般食品・生活用品の販売も面積比で30%まで認め、「水産業、水産加工業、水産物消費・流通拡大に寄与する施設」として2期事業を応援してきたことになる。
<「6次産業化の先駆的取り組み」が一転いじめにあう>
水産物卸売会社(有)マリン商会の浅沼信夫社長(運営協議会副会長)は、「一般食品・生活用品の売り場面積が10%程度という話は事前にはまったく出ていなかった。ところが、オープンしたら突然指導が始まった。県の指導通りに改善したら、今度は売り場全体の品目について、あれを売っちゃダメ、これを売っちゃダメと言い出した。これでは、売り場づくりができない。県の指導はいじめ以外の何ものでもない」と、絶望感を語った。
運営協議会は、2期事業の企画段階から長崎県と協議を重ねてきた。長崎県自身が「水産業の6次産業化を推進する先駆的取り組み」だとして、推進・支援してきた。それが、いったいなぜ手の平を返すように"営業妨害"とも言える指導に走ったのか?
※記事へのご意見はこちら