今回は、この「B-1グランプリ in 北九州」に出場した団体が地元でどのように評価され、地域の活性化にどのような役割を果たしているかを見てみましょう。事例は初出場にもかかわらずシルバーグランプリ(第2位)を獲得した「対馬とんちゃん部隊(長崎県対馬市)」と、同じく初出場ながら第6位を得た「田川ホルモン喰楽歩(福岡県田川市)」を取り上げます。
対馬とんちゃんはもともと、島の北部に位置する上対馬町の比田勝周辺地域に伝わる家庭料理。対馬の中心街である南部の市街地・厳原ではとんちゃんの食文化はなかったそうです。その北部対馬では、とんちゃんを提供するお店ごとに独自のタレを持っていて『「とんちゃん」と言えばコレ!』という標準味があるわけではないようです。
基本的には、ニンニクや味噌、醤油、ゴマ油、リンゴなど果物のすりおろし等10種類くらいの食材を合わせた調味料にデンマーク産の豚の肩ロースをつけ込んだもの。もともとは戦後、対馬在住の韓国人の方から伝わったものですが、上対馬ではこの食べ方が普及して地元のソウルフードとなったわけです。
ご承知のように対馬は、南北が82kmにおよび、南と北との交流は地形的なこともあって昔から少ないようです。そして、対馬への観光客は南部の厳原か対馬空港から入ることが多く、短い旅行のなかで北の方へ向かうことが少なく地元では何とか観光客を誘致したいとの意向があったようです。
そこで、対馬とんちゃん部隊ではこのとんちゃんを、比田勝への観光客呼び込みのために売り出そうとしたのです。地元に来て食べてほしいとのことですね。
これはどこのB-1グルメも同じです。地元に来て食べてもらうか、加工品となったB-1グルメを観光土産で持ち帰ってほしいわけです。
このような地元に対して熱い思いを持ち、自主的に地域活動を行なう姿に対馬市も腰を上げて各種PRを支援するようになります。遠征費等の各種費用は、それまではとんちゃん部隊メンバーの自腹だったそうですが、市が各種補助金を充てるようになったのです。私も福岡市にいて新聞のパブリシティネタで対馬のとんちゃんについてたびたび接するようになったのは、数年前のことでした。
とんちゃんは、私もグランプリの現場で見ましたが、バーベキューのように野菜と肉を焼くのですが、これを商品化しようということになり、上対馬の肉屋さんやコンビニエンスストア等がとんちゃん部隊と提携して商品化するに至ります。
そして、地元の小売業等でも積極的にこれを売り出そうと特設土産品コーナーをつくり、「対馬のお土産といえばとんちゃん」を売り出し始めます。スーパーオリジナルブランドのとんちゃんも誕生しているそうです。
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和歌山大学産学連携・研究支援センター客員教授、観光学部フェロー
西日本工業大学デザイン学部非常勤講師
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