<熱とお湯を使った地域暖房>
スウェーデンでは、地域で「お湯」を供給するパイプラインが設置されており、地下から熱水を取り出したり、ボイラーで沸かしたりして、主に暖房、シャワーなどに使用し、エネルギーを無駄なく、効率的に利用することに役立っている。地域ごとにお湯を供給するパイプラインのネットワークは、約60年前から作られ、スウェーデンでは常識的なインフラの一つだという。
日本では、湯沸かし器などで電気を使ってお湯を沸かす場合、「火力発電での熱→電気→湯沸かし器で水を沸かしてお湯」とロスが多いが、スウェーデンでは、地下からそのまま熱水として取り出したり、「燃料→お湯」で熱水に変換にして使うケースが多く、エネルギー変換ロスが少ない。お湯をパイプのネットワークでつなぎ、床暖房などに使用する発想法と、熱水を有効に使うインフラ技術を持っているという歴史的経緯もアーランダ空港での成功につながった。
アーランダ空港で成功している地熱水利用は、ある程度限定した形であれば日本でも導入可能だろう。地域暖房のネットワークについても、配管のインフラをすぐに作るのは難しいが、オフィスビルやホテルなど建物単位、小規模のコミュニティであれば実現できそうだ。特に寒冷地では、省エネ効果が見込める。
<自然を生かした省エネ>
日本では、発電所や送電線網など電力供給のインフラが全国各地に行き届くのが早かったため、「地域地域の自然を活用して、いかにエネルギーを効率的に使用するか」ということに知恵を絞ってこなくてもエネルギー供給に苦労することはなかった。ただ、エネルギー自給率は低く、燃料費も莫大。生活の質を落とすことなく、脱・化石燃料を進めるのに欠かせないのは、エネルギーの効率化だろう。いかに、無駄なくエネルギーを使うかを考えた時、スウェーデンの成功例のように、地下の利用や、地熱も選択肢の中に入る。
スウェーデンでは、たとえば、ゴミを燃やす際、その熱を捨てるのではなく、お湯を沸かして有効に利用するという考え方が定着している。日本でも、その土地にある自然を効果的に利用する考え方が今よりも定着すれば、化石燃料の使用を削減できるのではないか。
見渡せば、技術はある。その技術をどう有効に使うか。マッチングと、発想の転換は、今後、必要となってくるだろう。
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