九州観光に訪れ、最後の1泊は「福岡」という台湾旅行客のツアーは多い。九州での人気は熊本県阿蘇、大分県別府に加え、ここ数年は長崎県ハウステンボスが急上昇している。福岡は観光名所の面で引けを取るが、空港があるため、福岡は「最後の1~2泊で滞在」というパターンが多い。福岡内の人気スポットは「免税店」で、福岡の街歩きとしてガイド本が薦めるのは「屋台」。しかし、この「屋台」が台湾人観光客からすこぶる評判が悪いようだ。
台湾人向けガイドブックへの記載に、屋台は「夜市のイメージ」という記述が多い。情報と先入観をもとに台湾人観光客が福岡の屋台を訪れると、台湾の夜市とは違い、「のれん」がかかり、オープンな雰囲気ではない。何が食べられるかも見えず、店主も通行人に対して「美味しいから立ち寄って!」と愛想よくふるまっているわけでもない。その店が「何を売っているのか」もよくわからないし、客も「内輪」で盛り上がっている感じだ。
台湾の夜市は開放的で、商品が外から見ても一目でわかり、食欲をそそる。外国人にとっては、台湾夜市に比べると福岡の屋台はクローズな雰囲気で、「店主と知り合い」もしくは「誰かに連れられて一度来たことがある」状態でなければ、なかなか入りづらいようだ。「店主の愛想が悪い」というのも、台湾人観光客が挙げる福岡屋台の特徴だ。緊張感のなかで入店し、仏頂面の店主に後悔したという話も多い。
さらには価格の問題もある。台湾夜市ではメニュー表に価格が明記されており、単価も安く、基本的には前払いだ。福岡屋台は「時価」とされているものも少なくなく、価格のよくわからない「お通し」なども出され、レシートなどに各単価が記されないため、後払いで「え!?こんなにかかるの?!」と、半ばボラれたような不信感を覚えながら、店を後にする観光客が多いという。台湾では「夜市で食べると安く美味しく経済的」というイメージを持っているが、福岡は「屋台で食べても経済的でもなく、店舗の方がいい」と考える地元の福岡市民すら少なくないのが現状だ。
観光客の不満を受け、福岡での屋台をとくに薦めない台湾人旅行ガイドも増えているようだ。行政の意向ですでに減少傾向にある福岡市の屋台だが、「入って食べはしないけど何となく横を通ってみよう」と、キャナルシティから国体道路付近まで歩く、「散歩だけの」観光客は依然として多いという。
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