こうした新たな動きを踏まえたうえで、今後は地方の経済活性化にとって弁理士の果たす役割が増大すると思われる。地方のブランド化を進めるうえにおいても、全国に1万人以上の会員を要する弁理士会の関与というものがますます求められる。
すでに地方における新たなサービスや商品、とくに最近話題の「ゆるキャラ」等に関しては、その商標登録等に際して、無料で事前の相談に応じてくれる弁理士会の方々の存在が高く評価されている。
今後とも、地域経済の振興にとって、弁理士会の果たす役割が重要度を増すと思われる。当面は、無料でのサービスが提供されることになってはいるが、こうした専門的なアドバイスに対しては、いつまでも無償ということにはならないだろう。
知的総合支援窓口が全国に設置されているが、こうしたサービスによって地域の新たな産業の発展が確実なものになっていけば、経済的恩恵も地域で感じ取れるようになるわけで、そうした暁においては、しかるべくサービスの対価も支払われる仕組みに制度設計を変更させていくことが必要になってくるはずだ。
と同時に、海外に広がる日本商品の模造品や海賊版対策も欠かせない。平気で偽物を市場に投入する動きは、明らかな知的財産権の侵害であり、商標権を冒涜するものであるため、政府としても毅然とした態度で臨む必要があるだろう。ジェトロ(日本貿易振興機構)の海外事務所においては日系企業向けの模倣品対策の相談窓口が設置され、我が国の中小企業等が外国での模倣品被害を受けたときに、それを支援する動きを強化している。ただ、現実にはイタチごっこの状況が続いており、我が国の知的財産が保護されないままの状況が続いている。
この分野では、我が国は、ACTA(偽造品の取引防止に関する協定)にアメリカやEU諸国とともに参加し、実効性の高い知的財産保護の取り組みを目指してはいる。
とはいえ、模倣品や海賊版の貿易被害は年々拡大する一方で、正規品の世界貿易額の2%以上がこうした模倣品によって取引されているという現実がある。日本企業にとっては、大変な経済的損失となっている。我が国とすれば欧米諸国と連携を深め、中国をはじめとする模造品大国に対する国際ルールを当てはめる動きを強化しなければならない。
≪ (中) |
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
※記事へのご意見はこちら