韓国で旅客船が沈没した事故は発生から約1週間を迎えた。日本でも連日、報道されているが、韓国では「マスコミの取材」が波紋を呼ぶなど、日本での報道内容とは大幅に異なるようだ。
韓国と日本を往来するある韓国人通訳者は、事故に関する韓国と日本の報道を比べ「日本の方が断然分かりやすい。日本は時系列を整理し、原因、結果などを『聞き手』の立場になって報じているが、韓国では内容がバラバラで『誤報』も多い。被害者家族も視聴者も深刻な『マスコミ不信』に陥っている」と話す。
韓国の報道では、乗客の数が異なっていたり、遺体で発見された乗客の氏名を他の人の氏名と取り違えていたり、現地では記者が家族に無神経な質問をするなど、冷静な「報道」が機能していなかった。前述の韓国人通訳者の話によると、行方不明者の家族が集まる彭木港の施設には韓国の取材陣のみならず、日本、アメリカ、イギリスなどの海外メディアも訪れているが、「海外メディアの取材は受けるが、韓国メディアの取材は絶対受けない」という家族もいるそうだ。
また、「韓国政府が日本からの支援を断った」という話も、日本では即座に報道されたが、韓国では約2日間、情報が伏せられていた。韓国のインターネットユーザーなどが日本の報道を見て、SNSに書き込み拡散され、ようやく表沙汰になったが、「国が情報を押さえ込んだのでは」と懐疑的に見ている韓国人が多いと言う。と同時に、「映画『海猿』のような優秀な部隊を持つ日本の支援救助を受けていれば、死者が出ずに済んだのではないか」という声もあり、国の対応は、さらに世間の批判の材料になっているという。
事故発生以降、テレビは基本的に「ニュース番組」のみの編成になったが、視聴者からの「事故報道ばかり見ているとかえって気持ちが沈む」「バラエティのような『笑い』はいらないからせめてドラマだけでも放送してほしい」といったクレーム、要望が生じ、徐々に番組編成は緩和される方向にある。「初動の遅れが大惨事に繋がった」との分析も広がる韓国・・・。さらに「日本からの支援拒否を隠した」「マスコミを誘導した」などという情報が、後から少しずつ漏れてくるにつれ、パク・クネ政権に対する不満が爆発している。
韓国では6月上旬に全国統一首長選挙が行なわれる予定だが、パク・クネ大統領が所属するセヌリ党は大きく後退する可能性もあると言う。韓国人通訳者は「マスコミ報道だけでなく、イベントや商店のセールなども自粛メードに包まれ国全体が暗い雰囲気にある。このムードはしばらく変わらないだろう」と話している。
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