世界で「修学旅行」の文化を持つのは、意外にも「日本」と「韓国」だけとされている。他の国でも日本の教育システムを参考に採用している学校はあるが、非常に稀。韓国に修学旅行があるのは「日本の植民地化」の影響で、敷かれた日本の教育制度の「名残」とされている。

　日本に修学旅行が誕生したのは「集団行動における価格メリット」が背景にあり、「団体旅行の制度を活用して、バスやホテルを貸し切れば、一人当たりの価格を抑えて旅ができる。教育的、歴史的な施設見学を加えれば学習にもなる。家族旅行するよりも子供に安く旅をさせられるため、反対する保護者も殆どいなかった」ということが発端とされている。日本は歴史的に「治安の良さ」「集団行動における秩序の高さ」の面で世界でもトップレベル。「数百人」の生徒を「十数人」の大人で監督しても、集団の統率を維持したまま旅を持続できる。他の国ならばあり得ない集団行動力だ。「修学旅行」は植民地時代に韓国にも伝わり、日本から独立した後も廃止されずに残っている。

　しかし、ここ数年「修学旅行はやめたらどうだ？」という声が韓国国内で頻繁に挙がっている。理由は「加熱する受験戦争」にある。受験戦争を優先し、中高生が部活すら行なわない韓国。「修学旅行に行く時間があったら勉強をさせたらどうだ」と、保護者や進学率最優先の教育者が声を挙げている。韓国の修学旅行は、国内では慶州、光州など歴史深く、風光明媚な都市が主な行き先で、海外では、日本の「九州」が人気スポットだ。学生は「初の海外」を修学旅行で体験する生徒も多いが、「時間のムダ」として修学旅行に異を唱える風潮もある。

　そして、その流れに拍車をかけているのが、珍島沖で発生した客船沈没事故だ。修学旅行の高校生が多数巻き込まれた。「大人の指示を忠実に聞いた」生徒が犠牲になった。「やはり修学旅行はいらない！」「今年から辞めるべきだ！」という保護者からの声はさらに高まり、実際に、今年の修学旅行を中止する学校も少なくないと言う。

　日本では「修学旅行廃止論」はあまり聞かれることはない。しかし、韓国では異常とも言える厳しい受験戦争での廃止論の土壌が根強いなか、今回の沈没事故で「完全廃止」の決定を下す学校は大幅に増えそうだ。

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