AKB48のメンバーが襲われた事件が日本のメディアを賑わせているが、台湾でも21日夕方、台北市の地下鉄車内で無差別殺傷事件が起きた。台湾では発生直後からメディアが夜通しこのニュースを報じ、国内は恐怖に包まれている。
20年以上前の台湾は「危険」と言われた場所も割とあった。交通事故は多発、強盗、スリ、誘拐等も多く、日本人観光客からも「治安が悪い」というイメージが持たれ、警戒が必要だった。
しかし、ここ十数年で台湾の状況は激変、インフラ整備や労働環境の改善、経済成長によって危険な国ではなくなっていった。むしろ、動機が解せない無差別殺傷が発生していた日本と比較すると、「台湾の方が、治安は良い」とさえ言える状況となっていた。
ある日本人ジャーナリストは「台湾は経済の伸びとともに、人々の道徳レベルが上がっていった。日本のように『理由も無く人を殺傷する』という案件も少ない。ここ数年の安全度でいうと台湾の方が高かったのではないか」と話す。
道徳面の向上は、「日本人からの影響」という見方もある。気性が激しく荒れた性格の「大陸(中国)人」を反面教師にし、上品で礼儀正しい「日本人」を参考にすべき、との道徳教育が功を奏したという見方もある。
今回の無差別殺傷事件、犯人は台中市にある東海大学の2年生だ。東海大学は私立大学で偏差値も高い名門。しかし、複数の知人は「オタク(中国語では『宅男』と表記)だった」「殺人ゲームばかりしていた」「友達がいなかった」と証言した。
テレビゲーム文化、オタク文化は日本から持ち込まれたもの。ある台湾人は「ここ最近、台湾の若者の考え方が『極端な行動』に走ったり、若者が突然キレたりする、という傾向が見られるようになった。台湾人はもともと人と交流を持つのが好きな民族だが、ゲームやオタク文化によって交流を断ち、引きこもる若者も出てきた」と話す。日本でも「宮崎勤事件」や「酒鬼薔薇事件」など引きこもりやオタク文化が影響した凶悪事件がたびたび問題視されてきた。
一部報道では、台北無差別事件での犯人は「小動物を殺すのを楽しむ習慣があった」と言われている。「酒鬼薔薇事件」の犯人と酷似した傾向だ。
動機は闇のなかだが、「特定の相手をターゲットにしたもの」でもなく、「宗教を背景にしたテロ」とも言えない。「動機がわからない」という点から、台湾では「日本的な犯罪」という声もあがっている。
台湾では事件発生を受け、テレビゲームの功罪について検証が始まった。台湾では若者が「無差別」に人を傷つけるケースはほとんどなかったが、今回の事件は、日本から持ち込まれた「ゲーム文化」「オタク文化」と無縁とは言えないようだ。
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